健全な情報社会をめざして
 情報化レビュー・電子版
 第118号

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東洋の歴史から学ぶ ~時代を生き抜く知恵と思考~

第24回 「己丑(2009年)の意味」
   早いものでもう師走。多事多難であった平成20年も暮れ、新しい年の足音がすぐそこまで迫ってきている。来年は干支暦では己丑(つちのとのうし)にあたる。古代東洋人が空間と時間を組み合わせた六十干支を考案したのは殷王朝の初期で、今から4千年前のことである。それが今日でもわれわれの日常生活でも活用されていることは実に驚異である。

   六十干支の原義による解釈では、空間符号である十干の「己」は、紀を省略した文字で、乱れた糸筋を通すという意味がある。前年の「戊」が茂で、樹木の繁茂した状態で衰退を意味し、茂り過ぎた枝葉を剪定して物事を整理しなければならない。「己」はその後を受け、筋道をはっきりと通すことである。ちなみに、その次の「庚」は更新の意味を持っている。それに対し時間符号である十二支の「丑」は結紐、すなわち紐で結ぶという意味である。季節でいえば1月。真冬が少し過ぎ、一方で北風が物凄く吹くときである。ここに東洋史観の一節を紹介しよう。『十二支の丑は単なる牛にあらず。丑は紐なり、結ぶ意なり。一つの時代の結び終るなり。寅は虎にあらずして、人みな演ずるの意なり。演ずるは喧噪なり。時は荒れ、新しき時、卯に初めて開く。卯は門の開く形にして新しき時代は卯に始まる』。

   平成21年の己丑年は「一つの時代の結び終るなり」と述べた年で、今までの流れに終止符をうつ時。そこで大切なことは紀律を正して筋道をはっきり通し未来にそなえることである。さらに次の庚寅年では、これまでの仕組みや制度などの変革が起こり世界は混乱することになる。そして新しい考え方で世の中が動き出すのは次の辛卯年からで、そこから新しい時代が始まる。これからの3年間は時代の変革期で価値観が変わる時期といえよう。

   歴史上の史実を見ると、2周前の己丑年は明治22年(1889)である。大日本帝国憲法が公布されている。アメリカとの改正通商航海条約の調印。また、この年から日本最大の経済恐慌が始まっている。1周前の昭和24年(1949)は、アメリカが経済安定政策(ドッジライン)を明示、ドル360円単一為替レートが施行。国鉄人員整理、下山事件や三鷹事件の発生、行政機関職員定員法と大量人員整理施行、外国為替・外国貿易管理法公布などが起きている。海外では北大西洋条約機構、中華人民共和国の成立、ソ連・東欧5カ国の経済相互援助会議(コメコン)創設などがある。

   このように歴史を繰ってみると、来年の己丑という年はただならぬ年であるといえよう。内政的にも外政的にもさまざまな問題が紛糾する時代は、見通しが利き筋道を立てる気骨をもった政治指導者が出て、てきぱきと問題を解決してくれることが望まれる。そのための新しい政治秩序を確立することが巳丑の年の意味するところであろう。来年は国家だけでなくわれわれの国民生活においても、従来の曖昧な雰囲気を一掃して、何事によらず筋を通して考え行動していくことが大事となろう。

 

<著者プロフィール>
鴇田 正春(ときた まさはる)氏
情報化推進国民会議委員。
元青山学院大学教授 1961年、早稲田大学理工学部卒。
日本I.B.M専務取締役、顧問。関東学園大学経済学部教授兼経営学科長(99年―03年)、法政大学大学院社会科学研究科客員教授(01年―03)、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。05年定年退職。現在に至る。