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巻頭言 |
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「復興に向けたITの役割」
NPO法人東アジア国際ビジネス支援センター 事務局長 安達 和夫
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堺屋太一氏はその著書「第三の敗戦」で、バブル崩壊以降20年にわたる低迷期の末に起こった今回の大震災を‘第三の敗戦’と名付けておられます。しかし、氏は決して悲観論を述べておられるのではなく、かつての敗戦、すなわち第一の敗戦で幕藩体制による身分社会から近代社会に変わったように、また、第二の敗戦で軍閥中心の軍国社会から経済社会に変貌したように、今の日本は次のステップに向けた新たな一歩を踏み出す時期を迎えており、その踏み出し方が重要であると訴えておられます。
危機に陥った時、人間は本能的に一瞬息をひそめ危険から身を守ろうとします。今回の震災で、「想定外」という発言が政治家などから多く聞かれましたが、こうした言葉にも危機的状態に対する一種の防衛本能を感じます。しかし、防御の姿勢からは活路は見出せないのは当然で、今後進むべき方向を示してくれる政策を多くの国民は待ち望んでいます。それにも拘らず、政治や行政から一向に日本再生に向けた明確なビジョンが示されないばかりか、国会は依然党利党略による政争に明け暮れている。国民が抱いている閉塞感の根源はここにあるのではないでしょうか。
さて、今後の日本の進むべき方向に向けて、そこでITがどのような役割が果たせるかについて考えてみたいと思います。
今後、日本が‘第三の敗戦’を乗り越え、新たな未来に向かって真の復興を果たすためには、乗り越えなければならない大きな壁が存在します。震災復興、原発問題、財政赤字、年金問題、地域医療問題、雇用問題、少子高齢化問題等々です。それでは、こうした問題に対して一定の判断が下せるだけの情報が、どこまで国民に提供されているのでしょうか?これには大いに疑問を感じます。
原発事故による放射能の拡範状況や食の安全性などの情報は、ピンポイントで発信しない限り意味が持てない情報です。これには文部科学省や厚生労働省、消費者庁などが提供する政府情報を尻目に、インターネットを活用した民間による情報発信サイトが大きな役割を果たしました。
日本が真の復興を果たすには、社会システムの抜本的な変革が必要になります。そのためには、危機的状況を迎えている今こそ、情報を正しく確実に伝達することで国民と問題を共有する、いわゆるピア・プレッシャー効果を醸成していくことが重要です。変革には様々な議論や軋轢が生じるのは当然であり、それだけに国民は問題の本質を正確に理解し判断することが求められます。これには、インターネットの双方性をフルに活用した‘eデモクラシー’の実現が大きな意味を持ちます。こうしたインターネットを介した「前例なき透明化(Unprecedented Transparency)」の実現を、日本の復興に向けたIT活用の第一に挙げたいと思います。
二番目に挙げたいのは、ITを活用した効率的な社会の実現です。
平成23年度予算に盛り込まれている公務員の人件費は、国庫負担分で7.5兆円、それに地方公務員の人件費を含めると21.3兆円に上ります。この数字は、定数削減などの努力を行った上の結果です。問題は、それらの人件費が本当に人にしかできない仕事に振り向けられているかということです。筆者がこれまで行政現場の実態を調査した限りでは、必ずしもそうとは思えない場面に数多く遭遇しました。
例えば、何か申請を行う際に必ずといって良いほど求められる住民票や戸籍謄本などの証明書類、これらの書類を発行するための専門の窓口と職員が常駐しています。また、紙文書と電子文書が混在していることで、お互いの文書交換のためにデータの入力や出力のプロセスが人手によって行われています。利用者にとっても、行政管轄の違いで同じような書類を何枚も提出を求められる場面は多く経験されていると思います。
ITには、組織を横断して情報を伝達する優れた機能があり、こうしたITの特性を生かすことで、行政内にとどまらず社会全体の効率化が実現すると思います。
第三に挙げたいのが、クラウド・コンピューティングを活用した情報の共有化です。
震災で役場ごと流され、自分を証明できる文書の全てが失われたことはニュースにもなりました。こうした災害時の情報バックアップ手段としてクラウドが注目されていますが、本来のクラウド・コンピューティングには、情報や処理プロセスを複数機関でシェアすることで、情報のスケールメリットを高める効果があります。
情報のスケールメリットを高めることは、将来の社会に大きな変革を産み出す呼び水になります。医療に応用すれば、例えば病院の電子カルテをEHR(Electronic Health Record)を介して救急医療や介護などに応用することも、PHR(Personal Health Record)に反映することでインターネットを介した個人向けの医療サービス、遠隔健康相談やセカンドオピニオンに活用するなど、様々な可能性が開けます。もちろん、医療に限らずあらゆる場面にも情報のスケールメリットの利点を生かすことは可能で、クラウド・コンピューティングは社会を変革する大きなポテンシャルを持っていると言えます。
こうしたITの持つ可能性を最大限引き出して、大胆に社会を変革していくことこそ日本の復興に求められているのではないでしょうか。
前述したように、変革には様々な議論や軋轢が生じるものです。しかし、‘第一の敗戦’‘第二の敗戦’を乗り越えてきた先人達に習い、明確なビジョンと実行力それに果断な意志を持って、我々は‘第三の敗戦’を乗り越えていかねばなりません。日本が真の復興が果たすことができれば、世界の日本に対する期待は厭が上でも高まり、復興の実績を‘日本モデル’として世界に発信できる日も決して夢ではないと思います。そして、その時代には必ずITが社会を支える基盤として根付いていると確信しています。
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