「情報化シンポジウム・イン・神戸」開催報告  
 
行政と企業のタッグで地方創生を
〜ICTの利活用による地域情報化 の普及と展開〜
    情報化推進国民会議は去る12月3日、兵庫県私学会館にて、関西生産性本部、関西情報センター、地域情報化推進機構などとの共催、総務省近畿総合通信局、経済産業省近畿経済産業局、NTT西日本(株) 経営企画部、兵庫ニューメディア推進協議会の後援により、「情報化シンポジウム・イン・神戸」を開催した。このシンポジウムは、情報化推進国民会議が毎年全国各地で開催しているシンポジウムの1つで、「行政と企業のタッグで地方創生を〜ICTの利活用による地域情報化の普及と展開〜」をテーマに、関西圏の各地から160名が参加し、基調講演、パネル討議とも満員の参加者で大いに盛り上がった。

黒瀬氏


   はじめに各主催者を代表して関西生産性本部の小宅(おおや)専務理事から開催挨拶があり、引き続き基調講演として、総務省 地域力創造グループ 地域自立応援課長 黒瀬 敏文氏より「地方の元気を引き出すために」と題した講演があった。その中で黒瀬氏は、人口減少社会が生むマクロや現場の問題を克服するには、介護や子育てインフラの補強など、今ある東京問題への対処と、地方圏への人の流れをつくることを強調した。

 具体的には、受け皿(生活圏=まち)を整え、仕事を創り、人の流れをつくる、という3つの観点から推進する。受け皿を整えるでは、中心市と近隣市町村が相互に役割分担し、連携。協力することにより、圏域全体として必要な生活機能を確保する「定住自立圏構想」を推進し、地方圏における定住の受け皿とする。兵庫県但馬、長野県飯田市、福岡県八女市の例を紹介した。

 仕事を創るでは、地場産業をおこすなどして、地方で付加価値を上げる、生産性を上げることが重要で、雇用吸収力の大きい地域密着型企業を1万事業立ち上げる「ローカル10,000プロジェクト」や電力小売り自由化で新たに開放される市場を地域経済の活性化につなげるため、地域でエネルギー関連事業を立ち上げる「分散型エネルギーインフラプロジェクト」、地域の元気創造や地域活性化に役立つアプリケーションを運営する「地域の元気創造プラットフォーム」などが例示された。

 人の流れをつくるでは、「移住・交流情報ガーデン」や「全国移住ナビ」の開設など、地方の居住を支援するための様々な取り組みが紹介された。地方への移住といっても、誰でもいいのではなく、住民票を移して、生活拠点を移した者を「地域おこし協力隊」として受け入れ、地域ブランド、地場商品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援などの地域協力活動をしながらその地域への定住・定着を図る取り組みのほか、地域おこし協力隊の企業版である「地域おこし企業人交流プログラム」についても言及された。

 最後に、人はいくつになっても成長でき、そうしたライフスタイルを支える持続可能な社会を民間の健全なソーシャルビジネスで回していく仕組みを作るべきだと提唱した。

大南氏


   引き続き基調講演として、特定非営利活動法人 グリーンバレー 理事長 大南 信也 氏が「創造的過疎をデザインする神山のチャレンジ」と題して講演した。大南氏は、2008年日本の総人口が減少し始めた時に、神山町の過疎化の現実を受け入れ、外部から若者やクリエイティブな人材を誘致することで人口構成を健全化したり、ICTを使って多様な働き方を実現できるビジネスの場としての価値を高めるなど、農林業だけに頼らない持続可能な地域「創造的過疎」を目指すことを決意した。

 全国的に見られる地域課題(雇用がない、仕事がない)を解決するため、1.ITやデザインなどのサテライトオフィスの誘致(本社の移転や新会社の設立など)、2.仕事を持った移住者や仕事を創ってくれる企業者を呼び込むワークインレジデンスの実施(カフェやパン屋、商店街の誕生など)。3.神山塾(職業訓練等を通じた、地域を担う後継人材の育成)の3つを神山プロジェクトとして推進した。サテライトオフィスでは、東京から飛行機・車で約2時間で来れることから、ITベンチャー、デザイン、映像関連企業などが12社進出してきており、徳島大学の授業も行われている。

 ワークインレジデンスでは、町の将来にとって、必要と思われる働き手や起業者を移住支援センターやウェブサイト「イン神山」等を通じて、逆指名で集めて町づくりを進めており、その推進効果は大きかった、という。

 神山塾では、6カ月の求職者支援訓練を行い、6年間で77名を受け入れた。そのうち、約半数が神山町に移住し、サテライトオフィスにも10名が雇用された。カップルも10組誕生して、子供も生まれている。

 このように、神山町では、人が集まり、人が人を呼ぶ循環を作ってきた。過疎地では、そこに何があるかでなく、どんな人が集まってくるかによって価値が決まってくる。今までのように、地方は「小さな東京」を目指すのではなく、東京にない価値観を発信していくべきである。ここは関西なので、好きな関西を素敵な関西に変えるには、手を加え、いい方向に行動を起こすべきであって、そうすれば、市町村も都道府県も日本ももっと素敵になれる、と結んだ。



多次氏


   続く特別講演(1)では、朝来市の多次 勝昭市長より、「企業と行政の連携、情報化の事例」と題した講演があった。平成17年4町合併により誕生した朝来市は人口約32000人、高齢化率32%、天空の城として一躍脚光を浴びている竹田城跡など観光資源を抱えている。現在、人口政策を最重要課題とする第2次総合計画、朝来市に貢献する「ひとづくり」を中心とする創生総合戦略(移住希望者向け田舎暮らし体験会、空家を活用した移住者の起業試演など)を推進している。

 企業と行政の連携については、地域と一体となった未来づくり、活性化を推進するため、神戸新聞社と連携し、竹田地域のまちづくりについてとりまとめ、市に提言をした。2つ目の事例としては、夜久野高原における大規模農業の展開。大手食品メーカー、大手農機具メーカー、朝来市の道の駅運営会社の3社で「緑の風農場」を設立し、農産物の生産・加工・販売を手掛ける6次産業化を進めている。また、耕作放棄地の解消や後継者の育成も併せて行っている。3つ目の事例は、官民5者の協働による木質バイオマス発電事業。兵庫県、朝来市、兵庫県森林組合連合会、兵庫みどり公社、関西電力エネルギーソリューションの5者が、間伐材のチップ製造工場とバイオマス発電所(平成28年12月稼働予定)を同一敷地内に立地することにより、コストを抑えながら燃料の加工から発電までの一体化を可能にするとともに、森林の保全を行っていくことにしている。

 次に情報化の事例だが、地域ポータルサイト「あさぶら」を構築し、商工会と連携して、今年1月から「現在進行形の情報発信」を行っていく。2つ目は、昨年10月にサ−ビスを開始した「ジョブサポあさご」で、ハローワークとの協定締結により、UIJターンを希望する学生や既卒者の求職について情報共有と就職支援を実施している。

 最後に、朝来市は未来を担う若者世代を対象にまちへの愛情、誇り(シビックプライド)を育むシティプロモーションを展開している。「あなたはまちの未来 ASAGOiNG」というキャッチフレーズとともに、市民一人ひとりが主役となって、主体的にまちに関わりながら、まちの多様な魅力は発信していく、とした。

広瀬氏


   続く特別講演(2)では、養父市の広瀬 栄市長より、「地域の新たな生命を育むまちづくり〜国家戦略特区、人口対策、新産業育成〜」と題した講演があった。養父市は人口約26500人、高齢化率35%で、国家戦略特区への取り組みでクローズアップされている。従来の特区がボトムアップなのに対して、国家戦略特区はトップダウンで国、地方、企業の3者統合本部で、地域を限定した大胆な規制緩和や税制面での優遇で民間投資を引き出して、ビジネスしやすい環境を創出するのが狙い。

 養父市の場合、人口減少、高齢化とともに、基盤となる農林業が衰退し、コミュニティが崩壊して地域の伝統や文化を守れなくなっていく恐れが出てきたことを背景として、耕作放棄地等農地を流動化して多様な農業の担い手を確保する(農業委員会の権限を市に移管)、シルバー人材センター会員における労働時間の規制緩和を通じて元気な高齢者にもっと働いてもらう、といった提案を行った。実際、農地の流動化件数や農業への企業参入件数が大きくのび、米、野菜、花、はちみつ、トマト、ニンニク、食用ほうずきなどを作っている。新たな規制緩和としては、ドローンを活用した遠隔医療や医薬品の販売(三井物産と連携)、農業生産法人の要件緩和等も進めている。

 国主導ではもう地方を変えることはできないし、地方自身が考え、思い切ったことを進める。国家戦略特区を中心に地方から国を変えていく。そうしたことを養父市はやっていく。「何も失うものはない、だから養父市は挑戦し続ける」と結んだ。


パネル討議風景

シンポジウム風景


   以上の基調講演、特別講演を受けたパネルディスカッションでは、グリーンバレーの大南理事長、多次朝来市長、広瀬養父市長に、総務省地域情報化アドバイザーで(NPO)HINT理事長の井上あい子氏を加えて、地域情報化推進機構の野村副理事長がコーディネーターを務めた。

   はじめに、「人の流れをつくるために必要なこと」として、多次朝来市長は、 まちの活力は人口の増加があってこそ生まれるものであり、竹田城跡を始めとする市の 資源をどう生かすか、移住・定住してくる人をどうバックアップするかがポイントと語った。 広瀬養父市長は、地方創生は地方への新しい流れを作ることだが、掛け声だけではだめで、 そのための仕組みを作る必要がある。快適な生活、安全安心、医療機関の充実、情報を 入手しやすい環境づくりなど、人が動く仕組みが肝要である。また、当たり前と 思っていることが別の視点から見ると価値がある、ということがある。足元に宝があるので、 それを見出し、磨きをかけてほしい、と強調した。

 グリーンバレーの大南理事長は、予算をつけてものごとを動かすのでなく、外部の 人から提案されたことを入口でシャットアウトせず、実際にやって見せてもらう、という 場作りをした。外部の人のやりたいことが実現できる、という思いが、人の流れを生み、 新しいビジネスが生まれてくると力説した。また、神山町のモデルは他の自治体では そのまま生かせないが、そのエッセンスは活かせる。形から入るのでなく、流れを先に作って 、後から形を載せていく。そんなやり方が求められている、とした。

 地域内の連携については、多次朝来市長は、地域おこし協力隊へのバックアップや養父市との 協力体制をあげ、広瀬養父市長は、1つの自治体ですべての機能を持つことはできないので、 地域特性を活かすためにも、広域での連携により多くの機能を有することの必要性を訴えた。

 総務省地域情報化アドバイザーの井上氏からは、地域おこし協力隊と養父市の ケーブルテレビの紹介があり、それぞれのメンバーから活動状況を聞いた。

 最後に、地域情報化推進機構の野村副理事長から、今後は一人が1つの仕事でなく、複数の仕事を していく、あるいは、いくつかの仕事を組み合わせていく、そんなことが今後起きる のではないか。地方でこそ新たなビジネスモデルが生まれ、地方発の働き方革命が起きる のではないか、と締めくくった。