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コラム


■人的資源管理コラム
「大学職員の人事制度の現状と課題」<2010/11/01>
■ 厳しさを増す大学の経営環境
2000年初頭あたりから、大学職員の人事制度構築コンサルティングをさせていただく機会が増えてきた。昨年も、公立大学も含めて首都圏の中堅私立大学数校の人事制度設計・導入の支援をさせていただいている。そうした経験から、大学教職員の人事制度の現状と課題について触れてみたい。 周知の通り、わが国の若者人口(18〜24歳人口)は平成に入って以降、ピーク時の約1,400万人から1,000万人を割り込むまで、約3分の2に減少している。一方で、この間、参入規制の緩和により大学の新設が大幅に認められ、大学数は5割増となった。その結果、一種の逆転現象が起こり約600ある私立大学のうち半数近くが定員割れを起こす事態となっている。本年6月には、関西の私立大学3校や株式会社立大学が学部の募集停止を発表するなど、いよいよ大学淘汰が現実のものとなりつつある。 私学振興・共済事業団の調査によると、学生納付金や検定料は帰属収入の約7〜8割を占めており、受験者数の減少や定員割れは、帰属収入に大きく影響を与える。一方、学生納付金に対する教職員の人件費比率(依存率)は7割近くを占めており、徐々にその割合は増加傾向にある。私立大学の多くは、国家公務員準拠の俸給表、すわなち、毎年全員が1号ずつ昇給する定昇型の年功賃金をとりいれており、人件費は毎年右肩上がりに増加するため、現行制度のままでは、人件費率は今後さらに高まることが予想される。帰属収入の変動にあわせて、総額人件費の管理が可能な賃金制度へと早急に見直しを行っていく必要があるだろう。

■ 職員の活性化につながる制度設計
もっとも、そうは言っても、人件費の抑制のみを強く効かせすぎると、ただでさえ今のような厳しい状況下では、大学全体の活気が失われるおそれがある。職員を活性化し、元気が出るようにするには、推薦入試・AO入試など入試方法の見直しや学部新設、あるいは外部資金獲得など様々なやりがいのある課題を担当させるなど、面白い仕事ができるような環境や機会を与えることであり、そのためにも入職後10年間に異分野3部署程度を経験させるなど人事ローテーションや外部研修への参加など人材育成、キャリア開発支援の整備などが欠かせない。すくなくとも頑張った職員とそうでない職員とで、メリハリのある評価や処遇を行うことは、モチベーション維持・向上にとって重要といえる。 2000年当時、実際に大学の現場に出向いて驚いたのは、教職員に対する評価制度がない大学が多いこと、また、評価を行っていても、その結果を賃金など処遇に反映していない大学がほとんどであったこと、の2点であった。人材育成の場である大学において、そこで働く教職員に対して評価・処遇システムがほとんど導入されていなかったのである。当時、職員の方に仕事内容を伺うと、年間のカリキュラムに沿って運営することが中心で、新たに何かを企画提案したり、戦略立案するなどの仕事はほとんど求められていないといった回答が多かったように記憶している。運営、すなわちオペレーションが業務の中心ならば、特に個々人を評価する必要はないということになる。ある大学関係者の言うように、「大学に運営あって、経営なし」という状態だったのだ。 しかし、それから約10年がたち、先述したように大学を巡る環境は大きく変化した。従来、大学組織は教員による、教員のための自治が強く、多くは教授会による合意で決定されるため、職員は教員の意向を受けて動くべきものと位置づけられ、職員の方から大学運営に対して積極的に働きかけることはあまり求められなかった。しかし、その後、文科省が国立大学法人化に向けた答申の中で述べたようにしたように、「事務組織が、法令に基づく行政事務処理や教員の教育研究活動の支援業務を中心とする機能にとどまらず、日常の大学運営事務に加えて、教員と連携協力しつつ大学運営の企画立案などに積極的に参画し、学長以下の役員などを直接支えるなど大学運営の専門職能集団としての機能を発揮すること」が、まさに今求められつつある。実際、大学改革が活発な大学では、事務職員の力に負うところが大きい。自らが企画し提案し実行する職員を育成・評価・処遇できる制度の構築を通して、頑張りがいのある組織風土の醸成をしていくことが、今後の大学の生き残りを左右するといっても過言ではないだろう。

(日本生産性本部大学人事戦略クラスター上席主任研究員 東狐 貴一)


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