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■人的資源管理コラム
「大学教職員の賃金制度の特徴(第2回)」<2010/12/03>
前回、大学の教職員の賃金が下方硬直性の強い、右肩上がりの年功型賃金となっていると指摘しましたが、実際にそうなのか検証してみたいと思います。人事院では毎年「民間給与の実態調査」を行っており、そのデータから全国の私立大学における教員の年齢階層別賃金水準を知ることができます。このデータから、次のような大学教員の賃金特性が分かります。
図1,2は「人事院の民間給与の実態」調査による年齢階層別の大学教授および専任講師の賃金を95年、00年、05年、09年の結果を重ねて表示したものです。図表からわかるように、ほとんど賃金カーブの傾きに違いが見られないことがわかります。また、賃金の水準もほとんど差がないか、むしろ、95年に比べて2009年はやや高くなっていることがわかります。


では、民間企業のデータはどうなっているでしょうか?比較データとして、同じく人事院「民間給与の実態調査」の民間企業の事務系社員の賃金データを見てみます。図表3は事務課長、図表4は事務係員のデータです。
一見して、大学教員と民間企業の事務系社員の賃金カーブが異なることに気がつきます。大学教授の賃金は年齢と正の相関関係が見られ、年齢に伴いほぼ右肩上がりとなっていることが分かります。一方、事務課長の場合は年齢が30代ぐらいまでは、大学教授同様に右肩上がりとなっていますが、40歳代に入ると徐々にカーブがフラットになっていき、50歳以降はほとんど上がっていません。さらに、56歳以降賃金はやや下がる結果となっています。民間企業では、2000年以降、景気が停滞する中で、賃金体系の大幅な見直しが進みました。経営環境に応じて人件費をある程度変動費的に管理できるような賃金制度、例えば年俸制度などのように業績連動型処遇の導入が進みました。そうした結果がこの賃金カーブに現われていると考えられます。

また、事務系係員の賃金カーブ(図表4)を見ると、こちらは年齢と賃金水準に正の相関が見られるものの、賃金カーブは徐々に下がってきていることが分かります。つまり、賃金水準自体が下がってきていることになります。これは事務課長のデータについても当てはまります。大学教員の賃金カーブが95年から09年までのデータを比較しても賃金水準にほとんど差がないか、やや上昇していたのと比べると大きく違うことに気がつきます。
全入時代を迎え、定員割れの大学・短大が半数近くも出ているにもかかわらず、何故、大学の賃金水準が変わらないのでしょうか?民間企業での賃金水準が下降傾向にある一方で、大学では、こうした景気変動を受けるような賃金制度がほとんど導入されていません。その理由の一つには、多くの大学が国家公務員教育職(一)の号俸表に準拠していることが挙げられます。号俸表は評価による格差がない年功的給料表ですから、毎年確実に賃金は上がっていきます。この仕組みを変えない限り、右肩上がりの下方硬直的な人件費増は変わりません。また、人事院勧告によって公務員の賃下げが行われても、賃金凍結といった大学が多いため、賃金水準はほぼ維持されていることが多いようです。また、大学教職員の賃金レンジは等級間でメリハリの少ない重複型になっていて、下位等級でも勤続年数を重ねていくと上位等級の水準と変わらなくなるという特徴もあります。
こうした賃金が下方硬直的といえます。下方硬直的であるということは、大学の収益や個々人の成果に応じて賃金が上下に変動するということがない仕組みになっているということです。人事院のデータでは、大学で働く事務系職員の賃金水準は分かりません。しかし、コンサルティング事例からいうと、事務職員についても国家公務員行政職の俸給を使いつつ、運用は大学教員同様の大学が多いことが予測できます。

(日本生産性本部大学人事戦略クラスター上席主任研究員 東狐 貴一)


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