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■人的資源管理コラム
「大学教職員の賃金制度の特徴(第3回)」<2010/12/21>
大学職員の賃金体系を民間企業と比較した場合、俸給に連動した手当が入っていることと、所定内賃金に占める手当の比率が高いといった特徴が指摘できるのではないかと思います。図表1はある大学(事務職員)の賃金項目とその比率です(管理職層のみで算出、比率は対所定内賃金)。この大学では、いわゆる4分割前の国家公務員準拠の俸給表を採り入れています。つまり、毎年全員が定昇するという年功的賃金です。そして、その俸給に一律の係数を乗じて調整手当および繁忙手当が支給されています。
図表1


調整手当(あるいは大学によっては地域手当)は、公務員の“地域手当”に準じて支給している大学が多いと思います。例えば国家公務員の地域手当は、地域の民間賃金水準を公務員給与に適切に反映するよう、物価なども踏まえつつ、主に民間賃金の高い地域に勤務する職員の給与水準の調整を図るため支給される手当とされています。また、地域手当の月額は、俸給月額および俸給の特別調整月額、扶養手当などを算定基礎として、級地別支給割合(3%〜18%)を乗じて支給額が決定されています。(*1)
では、大学における調整手当の支給根拠は一体何でしょうか?
これまでコンサルティングを担当してきたほとんどの大学では、俸給あるいは俸給に扶養手当を加えた額に3%ないし4%を乗じた調整手当(地域手当)が支給されていました。しかし、調整手当の支給根拠を尋ねると、公務員に準拠しているだけという回答が多く、地域の民間賃金水準などを考慮している大学は一校もありませんでした。つまり、大学における調整手当(地域手当)は、何のために、何に対して支給しているか明確でない手当といえます。また、これ以外にも、この大学のように特別調整手当や繁忙手当などの名称で、調整手当同様に俸給に一定率で連動した手当を支給している大学も多くあります。
俸給に定率で連動するということは、毎年俸給の定昇に伴い手当の額も増加していく仕組みになっているということです。こうした手当は全職員に一律に支給され(多くの場合、教員にも同様に支給され)、さらに、こうした手当を期末手当や退職金の算定基礎としている大学も多く、こうした仕組みが前回までに見たように、大学における人件費増の大きな要因となっているのです。
ちなみに、民間企業では、基本給(俸給に該当)の所定内賃金に占める割合は約90%ですが(図表  )、この大学の場合、所定内賃金に占める俸給の割合は約82%となっており、諸手当の比率の高いことがわかります。コンサルティングを担当したある大学では、俸給比率が7割強程度といった大学もありました。
図表2


いずれにしても、全員の賃金が一律に上昇していく仕組みの中では、賃金が個々人のやる気や競争意識を高めるといった動機付け要因とはなりえません。賃金を、成果や貢献を引き出すための動機付け要因とするには、支給根拠が明確でない手当は廃止するなど見直しを行い俸給の比率を高めると共に、評価制度と連動した査定昇給のある賃金体系への転換が求められます。

(日本生産性本部大学人事戦略クラスター上席主任研究員 東狐 貴一)

注 *1:日本人事行政研究所編「平成22年版国家公務員の給与−その仕組みと取扱い−」参照。

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