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    ■キャリアコラム

■キャリアコラム:今改めて大学の就職力を問う=第1回= (2010/12/08)
    就職氷河期におけるキャリアセンターの課題
リーマン・ショックに端を発した就職氷河期も3年目に入った。一般雇用情勢は、相変わらず最悪だが、新規大卒(2011年卒)の求人倍率は、辛うじて1・68倍に踏みとどまったものの就職内定率は、やっと6割といったところ。こうした厳しい環境のなかで大学の就職支援は、新たな課題に取り組むことが求められている。グローバル人材の育成、知られざる企業の開拓、卒業生への継続的な就職支援などだ。

1.グローバル人材の育成をめざす
就職氷河期に突入して以来、いわれ続けているのが厳選採用というキーワード。かつての不況期と違って最近の企業は、新卒採用を中止することはない。グローバル化への対応や次世代経営者の育成という攻めの経営課題があるからだ。企業にとっては、優秀人材の採用が生き残り戦略である。そのため企業は、多くの応募者を集め、そのなかから優秀人材を最優先で採用してきた。
こうした人材ニーズとして最近、期待されているのがグローバル人材である。これは、世界を舞台にタフな精神、高度な専門知識、挑戦する姿勢を持って仕事をしようという人材である。これらの人材は、大学における就職対策講座では、到底、育成できない。大学における4年間の教育、とくにゼミや実践的な教育プログラムによって形成されるものだ。その手がかりが長期的な海外インターンシップへの参加であり、経済産業省が呼びかける社会人基礎力プログラムである。キャリアセンターの役割は、学内だけでなく、外部にある本格的な人材育成プログラムを発掘し、企業や地域と提携して少数でも優秀な人材を確実に社会に送り出すことが当面の課題だろう。

2.就職支援のプロになる
就職にあたって自分は何をやりたいのか、自分の能力や仕事のやりがいは何か、といった職業観は、大学のキャリア教育の中で形成されるはずだが、その職業観と就職希望先との乖離がありすぎる。学生が就職先を憧れや夢で決めるのは良いが、本気かどうか、そのための努力はしてきたのか。その能力やコンピテンシーを的確に評価することが必要だ。誰もが、インターネットで人気企業に応募できる現状では、数多くの企業にエントリーし、応募のチャンスを得ることだけに熱中し、企業選択に失敗し、多くの学生が未就職者になる。これを防ぐのには、的確な就活の指導と企業情報の提供である。アドバイスの舞台は、個人相談である。そのため大学の職員は、企業の沿革、事業内容、社風、事業戦略、財務、経営者のプロフィール、卒業生の消息、人事制度、教育制度などの最新情報を常に把握しなくてはならない。
キャリアセンターの職員は、キャリア教育に通じなくても良い。市販のデータベースの活用や就活の実態に通暁し、企業情報のプロになることが重要だ。だから職員は、日常的に会社訪問をして、足で歩いて企業の魅力を体感する見識と行動力が求められる。
さらに全国各地で開催される大学の同窓会への参加はもちろん、卒業生が役員の企業や地元企業との連携を密接にして求人依頼や工場見学、インターンシップなどのチャンスを開拓し、知られざる中堅企業や地元企業を発掘することが求められる。キャリアセンターの職員は、学生や企業そして地元に密着する就職のプロでありたい。

3.継続的な就職支援体制を準備する
すでに来年の就職活動が始まったが、いまだに就活中の4年生の姿を見かける。文部科学省の予測では、来春には8万人近い大卒未就職者が出ると予測している。そのため政府では、雇用対策の一環として卒業後3年間は、新卒枠での応募可能とするように経済界に要請している。
 こうした社会的な要請とともに大学にも卒業生の就職支援に新たな対応が求められている。その第一が、卒業生への継続的な情報提供である。未就職卒業生が就職情報を集める場所は、新卒向け就職サイトかハローワークだが、大学を指定して求人する情報は、やはり大学にしかない。そこで大学としては、卒業生にID、パスワードを発行して大学のホームページを活用してもらう。就職講座や学内の会社説明会も開放しなくてはならない。時期になれば就職相談も行うことになる。
こうした卒業生就職支援は、すでに実施している大学もあるが、キャリアセンターの新しい方向として取り組む時代がやってきた。面倒見の良い大学は、卒業生にもきめ細かい。そのためには、大学は、もっと広範囲に求人情報を集め、相談スタッフを増やすことが求められる。今後、キャリアセンターでは、就職をキーワードに卒業生や親との交流が活発になり、新たな大学のネットワークが形成されようとしている。これもキャリアセンターの新しい課題である。

(文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所所長
日本生産性本部就職力センター長・夏目孝吉)


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