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■キャリアコラム:今改めて大学の就職力を問う=第2回= (2010/12/20)
    若者を「居心地の良い自分」から引っ張り出す
就職活動に失敗するタイプとは
最近目立ってきた「就職活動に失敗するタイプ」がある。ひとつは、「手がかからないいい子」で、もうひとつは、「自称コミュニケーション力が高い、話し好き」だ。
前者は、小さい時からの優等生で、女子学生に多い。成績優秀、難関資格保有、留学経験、入賞実績など、学生目線から見て「華」がある。
後者は、理系で増えている。「オタクが多い中で、人見知りとは無縁の自分は、学部でコミュニケーション力ベスト3(→なぜかこういう自慢をしがち)」という。
両者とも就職活動に自信があり、「あっという間に内定を取れる」と踏んでいる。しかし、選考が始まると失敗を重ねてずたずたになる。深刻な挫折経験がない人が多く、立ち直りも難しい。
両者には、「自分の価値観への強いこだわり」がある。「いい子」さんにあるのは、今まで周囲の期待を察知して十二分に応えてきたから、これからも同じようにイケる! という読みだ。しかし、他人の価値基準を生きるのが就職。やっつけ仕事が高く評価されることもある。「こうすればこうなるはず」という筋道にこだわる彼女たちに、この現実は受け入れ難い。加えて何でもひとりで抱え込む点もマイナス評価となる。
「成長につながらないものはイヤと、仕事を選ぶ」、「質問、相談しない」など、最近急増中の「困った新人予備軍」と見なされるのだ。
「話し好き」くんも、周りが見えていない。面接の練習をすると、「伝えたいのは何か」を意識せずに、ひとりで楽しくしゃべってしまう。一昔前なら、「うるさい、ウザイ」と注意されたが、今は「アイツは放っておいて、自分は携帯しよう」という時代。自分の弱点に気づきにくい。
彼らだけではない。タイプの違いはあれ、「自分の価値観や考え」に閉塞する学生が増えている。大量の情報化社会は、人々の好奇心を拡げ、多様な価値観を育むのではなく、情報選択を難しくした挙げ句、自分に都合の良い情報ばかりを引き寄せる環境を生み出してしまった。その結果、従来よりも視野が狭まりやすいという皮肉な結果をもたらしている。

コミュニケーションを奪うネット環境の進化
さらに、ネット環境の進化は、予想外のコミュニケーション機会(例=電話や立ち話が聴こえる、道や探し物を人に聞く、知らない人に話しかけられる)をどんどん奪い、価値観や視点の転換が起こりにくい状況が進んでいる。人を育てるざらざら、イガイガ、ぴりぴりといった刺激が急減しているのである。
レポートに「僕は、『明日から本気出す症候群』にハマっています」と書いてきた学生がいる。何も行動せずにシミュレーションや情報収集で安心し、「その時がくればやりますから」、「考えてはいます」という若者が増えている。そんな彼らに、未来を託せるのであろうか。刺激がないところから挑戦は生まれない。若者に都合の良い情報武装をさせない仕掛けが、急務である。

(就職・採用アナリスト 斎藤幸江)


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