産業革命以来,およそ200年間における科学技術の発達は,生産性を急速に上昇させ,経済,社会の進歩に貢献したが,一方,階級の分化と富の偏在をもたらした。また,今世紀初頭の合理化運動は,経営の科学的管理を発達させたが,経済の恐慌と失業の増大に対しては,全く無力であった。
   オートメーションと原子力に代表される現代の技術革新は,速度,領域,深度において,かっての産業革命の比ではなく,それが経済,社会に及ぼす影響もきわめて大きい。 したがって,技術を十分に駆使できなかった過去の未熟な経験に鑑み,あらゆる工夫と英知を傾けて,これを人間のものとすることが,20世紀後半の生産性向上に課された任務であろう。いまや,生産性運動は,人類福祉の増進と文明の形成を目ざすいっさいの努力であるとされ,世界の60数力国が専門の機関を設け,この共通の旗印のもとに,生産性向上を競っている。
   日本の生産性運動はすでに5年目の歳月を重ねた。この間,先進技術の移入を端緒として,生産性意識が浸透するとともに,企業の社会的責任が強調され,企業の近代化と経営者職能の啓発が行なわれた。さらに,新しい労使関係が育成せられ,消費者の自覚が促されたこともまた画期的であった。
   前途を展望するとき,技術の進歩に伴って発生する,経済的,社会的課題はいよいよ増大することが予想され,加うるに,貿易の自由化に対応すべき,日本経済の体質改善が強く要請されている。ここにおいて,生産性運動が果すべき役割はますます重きを加えるであろう。
   日本生産性本部は創立5周年にあたり,以上のような情勢を考察して,今後における運動の方向を,次のように定め,決意を新たにして,目標の達成を期するものである。
(1) 海外の新しい経営管理技術を,日本の社会的,経済的土壌に適応させ経営近代化を図る。
(2) 企業の体質改善,経営職能の向上のため,産学協同のもとに,体系的組織的な経営教育を行なう。
(3) 労使間に,対等の原則と,協議の慣行を助長して,技術革新に即応する近代的労使関係の確立を促す。
(4)現場の診断,指導を通じて,中小企業の経営的基礎の強化に努める。
(5) 産業の急速な変容に伴う,技術的失業の発生や,大企業と中小企業,ならびに工業と農業間の生産性格差の拡大,経済発展の地域的不均衡などの防止に努力し,かつ国の政策の形成に寄与する。
(6) アジア諸国民の一致した希求である,生産性向上のため,その一員として,技術と経験の国際的相互交流を進める。
|