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トップページ > 生産性運動 > 「企業内における労使協議制の具体的設置基準案」(昭和39年4月 日本生産性本部労使協議制常任委員会)


■「企業内における労使協議制の具体的設置基準案」
      (昭和39年4月 日本生産性本部労使協議制常任委員会)

企業内における労使協議制の具体的設置基準案

昭和39年4月
日本生産性本部労使協議制常任委員会

はじめに
   今日の時代は第2次産業革命といわれるごとく,オートメーションを中心とした技術革新は,世界的潮流となって推進されている。
   とくにわが国の技術革新は,貿易自由化という側面的要素もあり,こゝ数年来急速な発展をみせている。
   このように生産性向上を目的とした技術革新は,わが国産業社会の諸構造のなかにおいて,小は職場段階の作業手順の変化から,大は企業ないし産業をこえた労働力移動に至るまで,あらゆる分野に変革をもたらしてきている。
   生産性の向上が,単に企業の私的利潤の追求を目的とするものでなく,広く労働者の生活水準や社会全体の福祉を向上させるものでなくてはならないことは,戦後数次にわたるILOの総会における勧告等をまつまでもなく明らかであり,また現在推進されている生産性向上運動の基本的指導理念としての生産性3原則の精神でもある。
   しかしながら反面において,生産性向上のための技術革新によって,雇用が脅かされ,賃下げや労働強化がもたらされるのではないかとの不安があり,国民経済の一部に過当な犠牲が強いられるのではないかという疑念があることも事実である。また場合によってはこうした事態が生ずることもあろう。
   確かに,技術革新は労働者や社会全体にとって「両刃の剣」である。
   そこでこれらの不安や疑惑を除去し,生産性の向上を人間の幸福に結ぴつけて,正しく,しかも効率的に推し進めていくには,先ず生産性向上に関する諸問題を労使双方が平和的に協議し,問題の本質を十分理解し,できるだけ合理的に最善の方法をもって解決していくことが必要である。
   このような民主的,合理的な新しい労使関係の確立を念願して本部の労使協議制常任委員会は,昭和32年7月に労働関係の学識経験者および労使代表の3者構成をもって本部内に設置され,今日まで内外の労使協議制の調査研究,各企業,産業における労使協議制の実体調査および事例の紹介普及,労使関係一般の指導相談斡旋等の諸事業を活発におこなってきた。
   特にこの間委員会報告書として,昭和32年8月わが国はじめての生産性に関する労使協議制の方向をとりまとめた委員会中間報告書「生産性と労使協議制」,同33年1月当時中小企業の労使紛争の増大に対処して,わが国の中小企業の労使関係のあり方についての指針として中間報告書U「中小企業と労使協議制」,同34年10月わが国における労使協議制の歴史,現状および問題点をとりまとめた中間報告書V「日本の労使協議制」,昭和36年1月わが国の公共企業体における労使協議制の歴史,現状,問題点さらに改善のための勧告書としての中間報告書W「公共企業体の労使協議制」,昭和36年10月技術革新の急速な進展にともない問題化してきた事前協議に対する指針としての中間報告書X「事前協議と労使関係」,昭和36年12月わが国における労使関係改善の具体的制度として苦情処理の運用と活用を明確にした中間報告書Y「苦情の組織的処理と労使関係」,さらに昭和36年11月産業別労使協議制調査研究報告書として「繊維産業における労使関係」を発表し,わが国における労使協議制の普及とその正しい発展のために力を尽してきた。
   ここに公にする基準案は,以上のような活動の成果の上に立って,これをさらに発展させていくため,従来の考え方を整理,集約し,労使双方に役立つような労使協議制の基準案を作成したものである。
   すなわち,労使協議制が順調に普及するにつれ,各企業の労使が労使協議制を生産性向上のために活用しようとして,本委員会に対して意見を求める傾向が強くなってきた。そこで労使協議制の組織,構成,運用について様々な見解があるが,これらを取捨選択して一つの望ましい形を発表することが必要となったのである。
   しかしこの基準案を労使双方に積極的に押しつける意図は全くない。労使関係は一つの人間関係である。したがって甲の企業の労使関係と乙の企業の労使関係は異なった性格をもつのが当然である。ここに示す労使協議制の基準案はすぺての企業の労使関係にそのままあてはめることは不可能であるが,その趣旨や内容についてはどの企業の労使関係でも採用することが可能であると考えている。
   この基準案をあらゆる企業の労使双方が検討して批判し,そしてやがて望ましいものとなるよう努力したいものである。なぜなら問題は実践にあるのであって,これを手がかりとしてさらによりよき労使関係を築いていくことは労使それぞれの任務である。
   特に委員会が強調していることは「進歩」ということであり,現状に甘んずることなく常に将来のよりよき状態をめざして努力するところに労使関係の進歩がある。
   労使が進歩の方向に対する深い洞察と高い識見を養い創造力と柔軟性をもって新しい労使関係の局面を開いていくことがわれわれの願いであり,この基準案がその方向への示唆ともなれぱ幸いである。

1.労使協議制の採用と労使の心構

   われわれは,労使協議制の基準案を示すにあたって,労使双方に注意を喚起しておきたいことは,労使協議制を採用するにあたっては,それを採用するための主観的,客観的な体制ができていなけれぱならないことである。もっとも抽象的に表現するならぱ労使間に信頼関係の存することが,これである。いいかえれぱ,労使協議制を採用するにあたっては,労使間に,それにふさわしい環境がなけれぱならないことである。
   労使間における信頼関係は,客観的な諸条件の下に形成されることもあるであろう。たとえぱ,労使間で長期間のストライキが行なわれ,それを機縁とし,労使が労使関係のたて直しに努力することによって生れることもあるだろう。また,他企業との競争にうちかつために,労使が努力することによって生れることもあるだろう。さらに,企業が発展しつつあり,それをさらに発展させるために,労使が協力することによって生れることもあるだろう。しかし,労使の信頼関係を生みだすもっとも大きな動力となるものは,労使間に信頼関係を確立しようとする労使双方の主体的な努力であるといってよい。

(1) 使用者側の心構
   まず,使用者側についていえぱ,使用者は,労働者の企業内における労働者のあたらしい地位と役割を承認していこうとする心構をもつことがもっとも必要である。わが国の憲法は,労働者の団結権,団体交渉権,争議権を保障したことは,それ以前に労働者が企業内において占めている地位を根本的に変え,労働者に広義の経営参与を認めたことを意味する。現在においては,使用者は,このような労働者の地位を否認することはできない。いな,労働者の企業内における地位の向上に応じて,さらに積極的に労働者を生産のパートナーとして認めていくべきであるということが,使用者の当然の倫理となってきた。 労働者を生産のパートナーとして承認していくことは,より具体的にいえば,「知らしむべし,よらしむべからず」という基本方針にのっとり,いままで労働者に関与させなかった,生産ないし経営問題について労働者の発言権を積極的に求めていくことを意味する。もとより,現代の社会において企業の経営権は,使用者にあり,労働者側の発言を取捨選択することができることはいうまでもないが,労働者側の発言に耳をかたむけ,できるならぱ,その納得の上で経営を遂行するという態度をとることが大切である。
   しかし,生産ないし経営問題についての労働者側の助言は,使用者が最終的に経営意見を決定する前に,尊重しなくてはならないということは,もはや常識と化しているといってよい。使用者が経営意見を決定した後において,労働者側に単に通知をするだけでは,使用者側の態度として,まだ十分であるとはいえない。
   もしこのような態度をもって,トップマネジメントのみならず,各層の管理者が経営を行なうようになれば,そのこと自体“労使協議"の実践であるといってよく,労使協議制の体制はととのったといってよかろう。

(2) 労働組合側の心構
   つぎに,労働組合側についていえぱ,労働条件の基準や労働者の待遇に関する問題は,団体交渉を通じて労使が共同決定するという建前がとられているが,生産ないし経営の問題については,現代の社会においては,使用者が最終的に決する責任をもっていることを承認すべきである。企業内の問題について労働条件に関する事項であるかどうか,あいまいな問題もないではないが,それがはっきりするまでは,労働組合としては,使用者側の権利を認めるべきである。こうすることによって,はじめて労働組合側の協議への体制がととのうというぺきである。
   したがって,生産ないし経営の問題について使用者側の協議の申入れに対しては,これをよく理解し,消化し,使用者側の納得するような対策を提出することによって,労働組合は,その発言権の範囲を拡大し,企業内における地位を向上していくことができるものと考える。
   しかし,労働組合として労使協議制にとりくんでいくためには,生産ないし経営の問題について理解しうるだけの素養を組合員がもつように,努力していくことも,また必要であることも忘れてはならない。

(3) 労使協議制の確立のために
   労使協議制の採用にあたっては,労使が以上のような心構をもつことが必要であるが,労使関係全般の立場から見れぱ,労使協議制と団体交渉を混合させないようにすることである。わが国の労働組合は,企業内組合であるため,ややもすると,この関係があいまいとなりやすい。使用者側では,労働組合の懐柔のために団体交渉を故意にさけて,労使協議制のみで労使関係の問題を処理しようとしたり,また労働組合側では,団体交渉のゆきずまりを打開し,企業内における発言強化のための闘争の手段として,労働協議制を活用しようとする場合もある。しかし,このようなことは,決して真の労使協議制ということはできない。
   基本的には,労使双方がお互いに権利を尊重し,生産性向上のために協議しようという共通の精神的基盤が存していることがなにより必要である。

2.労使協議制基準案の基本方向

   われわれは,労使協議制は,使用者と労働組合との間において締結される労働協約において設定されるぺきであると考えている。しかし,労使協議制を労働協約で設定するにしても,2つの方法がある。
   1つは,総合的な労働協約中の1章として,労使協議制を規定する場合である。わが国においては,この方法がもっとも普及している。
   2つは,労使協議制についての単独協約を締結する場合である。この事例は,比較的少ない。
   われわれが,ここで採用したのは後者の方法である。というのは,われわれの考えている労使協議制の理念型を,より明白に体系的に示したいと考えたからである。
   われわれの基準案は,別に特定の業種とか,特定の企業規模を前提としたものではない。本社のほか,2〜3の事業場をもつような企業を前提において考えることとした。
   ところで,この基準案においてとったわれわれの基本的な方向をはっきりしておきたい。

(1) 労使協議制を設定する場合にもっとも問題となるのは,それと団体交渉とをどのように関係づけるかである。われわれが今まで何度も報告書で指摘したとおり,わが国の現状では,必ずしも明らかではない。わが国では,団交慣行がまだ確立されていないから,近代的な労使関係を確立するためには,まずできるだけこの 2つの労使間の話し合いのチャンネルをわけるべきであると考える。したがって,基準案においては,2つの話し合いのチャンネルをわけるように努力した。しかし,このことをあまりにもはっきりわりきってしまうと,かえってわが国の労使関係の実情にそぐわない点もあるので,若干妥協の余地を残すこととした。

(2) 労使間の協議事項について,労働条件がからまり,協議をつくすことができないときには,それを団体交渉の場にうつして解決する途を講ずることにした。

(3) 従業員の個人的な苦情については,原則的には労使協議制の機関では取扱わない。しかし,多くの労使協議機関においては,これをとりあげているものもあるが,効果的に運営されている場合にはともかくとして,今後の方向としては個人的な苦情処理と労使協議制の機関とを別個に設置すぺきであろう。
以上の基本的な方向は,まだ労使双方になじみがうすいかもしれない。しかし,労使協議制の方向としては,間違っていないと信じている。

3.企業内における労使協議制基準案

生産性協議会協定案

(前文)
○○ 会社(以下会社という)と○○組合(以下組合という)とは,相互の信頼に基づき公正な労使関係を確立し,双方の協力によって生産性向上と労働条件の維持改善を図り,同時に労使双方に課せられた社会的責任を自覚し,もって会社事業の発展と組合員の地位の向上を達成するために本協定を締結する。

(性格)
第1条 会社と組合は,この協約の目的を達成するために,生産性協議会(仮称)(以下協議会という)を設ける。
2.協議会は生産性向上に関連する諸事項を協議することによって,相互の意思疎通を計り理解を深めることを目的とする。

(種類)
第2条 協議会は,本社および工場事業場ごとに設けるものとし,それぞれ中央生産性協議会(以下中央協議会という)およぴ工場生産性協議会(以下工場協議会という)をおく。
2.協議会の取扱事項は,次のとおりとする。
(1) 中央協議会 全社に共通もしくは関連のある事項。
(2) 工場協議会 工場事業所に関連のある事項。

(組織)
第3条 中央協議会は,会社を代表する委員(以下会社側委員という)およぴ組合を代表する委員(以下組合側委員という)それぞれ○名以内をもって構成し,工場協議会は,会社側委員および組合側委員それぞれ○名以内をもって構成する。
2.協議会の会社側委員と組合側委員の数は,必ずしも同数であることを必要としない。
3.中央協議会の会社側委員は,会社役員および非組合員である従業員の中から社長がこれを任命し,組合側委員は,組合員の中から,組合が選出する。
4.工場協議会の会社側委員は,当該工場に所属する非組合員である従業員の中から,工場長がこれを任命し,組合側委員は,当該工場に所属する組合員の中から選出する。
5.協議会の委員の任期は,2年とする。ただし,補欠により任命又は選出された委員の任期は,前任者の残任期間とする。
6.協議会の委員は,再任を妨げるものではない。

(書記)
第4条 協議会には,書記をおく。
2.書記は,本協定に定められたもののほか,協議会の指示にしたがい,協議会に関する一切の事務を掌る。

(幹事)
第5条 協議会には,幹事をおく。
2.幹事は,会社側委員および組合側委員の中から各1名を選出し,協議会の連絡および議事運営にあたる。
3.幹事は,議事に先立ち,協議会に付議される事項についての整理を行なうものとする。

(報告義務)
第6条 会社は事業の概況及び計画に関する事項については協議会において報告説明を誠意をもって行なう。

(協議事項)
第7条 協議会は生産性向上の諸問題を協議する。ただし個個の従業員の苦情処理は,協議会で取扱わない。
2.会社は雇用及び労働条件に影響を及ぼす経営上,生産上の諸問題は最終的に決定する前に協議会で協議する。
3.第1項及び第2項による協議の過程において,労使で決定する必要が生じた場合には,団体交渉で処理するものとする。

(専門部会)
第8条 中央協議会から付議された特定事項を審議するため,会社および組合がそれぞれ指名した○名以上○名以内の委員で構成する専門部会を設置することができる。
2.前項の専門部会の組織および運営については,別に定める。

(開催) 第9条 協議会は,毎月1回開催するものとする。開催の日時については,幹事が協議して決める。
2.前項の場合のほか,緊急を要する議案を協議するために,臨時に協議会を開催することができる。
3.前項の場合には,会社又は組合のいずれか一方から,開催希望日の3日前までに,日時,場所,議題等を文書で相手方に通知をする。ただし,緊急やむを得ない場合は,この限りではない。
4.前項の申入れを受けた相手方は,希望する議題があれぱ,これを付して回答する。
5.協議会に出席する委員氏名は,その開催前日までに相互に通知するものとする。

(座長)
第10条 協議会には,座長をおく。
2.前項の座長は,そのつど協議会に出席した委員の中から選出する。
3.座長は,議事を整理し,会議の進行をはかる。

(会議)
第11条 協議会は,会社側委員および組合側委員のそれぞれの過半数が出席し,議事を行なう。
2.協議会には,原則として委員以外の者は出席できない。ただし特定の事項に関し,会社,組合が合意したときは,委員以外の者を出席させて意見を聞くことができる。
3.会社または組合は,相手方の同意を得て傍聴者若干名を出席させることができる。
4.協議会での委員の発言については,会社または組合から責任を問われることはない。

(協議した事項の周知)
第12条 協議会に付議された事項および協議の内容については,可及的すみやかに非組合員である従業員および組合員に伝達するものとする。
2.前項の伝達は,協議会ニュースの配布によるほか,会社および組合双方の掲示板に掲示することによって行なう。
3.前項の文書については,その配布または掲示前に会社側および組合側の幹事の承認を得なけれぱならない。

(意見一致事項の処理)
第13条 協議会で会社側委員および組合側委員で意見の一致をみた事項については,会社および組合はそれぞれの機関の承認を得て責任をもって実施する。

(機密保持)
第14条 協議会の委員その他協議会に出席した者は,この協議会で知り得た機密を漏えいしてはならない。
2.機密の範囲は,そのつど協議してきめる。

(議事録)
第15条 書記は議事録を作成する,書記において議事録を作成した場合は,双方確認の上,会社,組合それぞれ1通を保管する。
2.前項の議事録は,労働協約としての効力を有するものではない。

(給与等)
第16条 協議会の委員が協議会に出席した時間中の給与は,これを控除しない。
2.協議会に出席に要する組合側委員の旅費,宿泊費その他必要な経費は,会社がこれを負担する。

  付則

(期間)
第17条 この協約は,○年○月○日から効力を有する。
○○会社社長○○○○
○○組合組合長○○○○




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