健康なる福祉社会形成のために
   いまや,「福祉社会」と呼ばれる新しい文明が,人類の歴史に一紀元を画そうとしている。これは,既成の資本主義や社会主義の概念を超えた未踏の文明であり,人間の英知と創造力によって,創られる新しい社会である。
   福祉社会はなによりもまず,人間中心の社会であり,自然と人間との平和的協調を基本とする第三の社会をめざすものである。産業革命以来,科学と技術を駆使して自然と闘い,富を築いてきた人類は,いまや「入間自身のもつ性質と闘わねばならない(ガボール)」のである。
   最近,言葉の上では“福祉”が氾濫し,スローガンとしては国民の意識に定着したかにみえる。しかし,福祉の実現は言葉の美感とはうらはらに,未開の原野を開拓するにも比すべき,厳しく,かつ困難な道程であることを銘記しなければならない。高成長のひずみ現象や生態系の限界から,軌道修正を迫られている日本経済が,成長減速のワク内で行届いた社会保障や福祉施設を充実するには,社会の成員全体の犠牲と協力なしには不可能であることは,スウェーデン,デンマークの事例を引用するまでもあるまい。
   さらに福祉社会の根底をなす理念は,相互扶助と社会連帯の思想でなければならない。現にみる地域エゴ,資本エゴ,階級エゴ,エゴとエゴの対立と相剋は,福祉の精神と相容れないものであり,その実現を阻むものである。人間尊重をめざす福祉社会への道は,物的条件の充足とともに高次の倫理を要求するものであり,人間の自我欲求との闘いでもある。
   現在,企業の社会的責任が厳しく問われている。同時に労働組合もまた社会的責任を問われている。それだけではない。国民は政治.政党の社会的責任をも不問に付してはいない。このような大組織に対する責任追求は,いずれも経済優位の社会から,福祉優先の社会への価値体系の変化にともなう世界的現象であり,旧い秩序から新しい秩序へ,旧い体質から新しい体質への脱皮の過程においては,多くの摩擦や混迷が予想されるが,混迷は福祉政策の実施を遅らせ,度を越えた摩擦は福祉社会の実現を不可能にする。社会各層の協力なくしては,福祉の達成はあり得ないのである。
   福祉社会という新しい文明の創造は,産業構造のみならず,政治.経済.社会.文化全般にわたり革新を迫る世紀の大課題であり,広汎な社会的諸勢力の合意と結集がなければならない。
   ここにわれわれは,上記の趣旨に賛同し,あい携えて健康にして活力ある福祉社会の建設に協力する労,使,中立,消費者各集団を以て「社会経済国民会議」を開設する。もとよりその道は担々たるものではない。幾多のハードルを越え,難関をくぐって,歩一歩彼岸に近づくことが,われわれの念願とするところである。
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