わが国の生産性運動はここに30周年を迎えた。
   われわれは戦後の荒廃した経済・社会を再建し,豊かで民主的かつ人間性溢れる福祉社会を築くには,労使が協力して生産性向上に取り組むことが,唯一最善の道であると確信して出発した。
   爾来30年の道程は必ずしも平坦ではなかったが,困難かつ変化の激しい情勢のなかで,積極的に実践活動を展開してきた産業界,労働界の生産性向上へのたゆまぬ努力と,これを支えた学界および政府の政策が今日の成果をもたらした。
   いま世界は21世紀へ向け,エレクトロニクス,ニューメディア,バイオテクノロジー,新素材を軸とする科学技術革命の渦中にあり,この革命は生産性を格段に向上させ,高度情報化社会へと人類のよりよき生存への展望を拡げようとしている。
   しかしながら,技術革命はかつての農業革命,工業革命にみられるように,社会に摩擦と緊張を惹起するのが歴史の示すところである。それは,技術革新とそれに支えられる生産力が,社会と人間におよぼす多面的な影響であり,その整合と克服には,社会の各層,とりわけ労使の一層の協力が重要である。われわれの先達はこの困難を人間の英知と努力によって克服してきた。
   一方,急速に進む高齢化社会は,公的保障制度における「福祉と負担」の在り方の再検討をせまるだけでなく,企業の役割をさらに増大させずにはおかないだろう。労働態様の変化への対応,雇用の安定,就労機会の創出は活力ある産業社会を支える基盤であることをあらためて確認すべきである。さらに「豊かさが豊かさをおびやかす」という現象は,歴史の教訓であり,これが及ぼす労働価値観の変化への対応は未来社会の命運にかかわる課題である。
   これらの課題は生産性運動が挑戦すべき未踏のフロンティアである。
   生産性運動は不断に前進する。その方法と行動は,時代の変転とともに変化するのもまた必然であるが,いま内外の情勢を見るとき,あらためて雇用の維持・拡大,労使の協力と協議,成果の公正配分の重要性を痛感する。来るべき変革の時代を想い,運動の新展開を図るべきとき,この運動三原則の意義と役割を再確認する。
   ひるがえって,日本の国際社会に占める地位を顧みるとき,われわれの運動は世界的視野のもとに進められなければならない。人類の未来を“人間の時代”として待望しその実現を期しながら,生産的な思考と行動に励むことである。
   世界経済の現状は,一応の小康を得ているとは言え慢性化する失業,累積債務,不安定な通貨,インフレーション,飢餓人口の存在などにより,混迷と危機を深めている。これが克服は,基本的には,「協同と交流」に基づく生産性向上が最善の道であることを確認する。
   われわれの状況認識は以上のごとくである。これにどう対処し,問題を解決していくかが,運動の進展に深くかかわることを自覚し,当面の行動目標をつぎのごとく定め,その達成を期するものである。
1.自由にして公正な競争を通じて,創造性豊かな企業の活力をさらに増進する。
2.高度技術が労働に及ぼす変化に対応して,雇用の安定と機会の拡大を図る。
3.革新技術の開発と社会と人間との整合システムを確立する。
4.生産性成果の公正な配分と労働の人間化を目指して,新しい局面における労使関係を樹立する。
5.生産性向上が世界経済の成長と人類の進歩の原点であることを確信し,これが実現に協力する。
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