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身近なサービス   2008年5月25日号

   「サービスしてよ」
   「これはサービスだよ」

   このような会話をしばしば耳にする。このような言葉を聞けばその情景もすぐに思い浮かぶ。街に出ても「サービスショップ」「サービス品」といった看板をいたるところで目にする。このあまりにも身近な存在である「サービス」について、これから連載していく。

   そもそもこの世にサービスが存在しなければ私たちの生活は成り立たない。サービスをビジネスにしている産業の重要性は増し、今では日本の経済規模ベースでも、就業人口ベースでも約7割を占めるようになった。モノづくりの多くが海外に依存するようになり、また少子高齢化も進み、今後ますますサービスの需要が拡大していくらしい。この経済活動におけるサービス産業の割合の増加は、他の国でも同じである。先進国だけでなく、最近は発展途上国でもサービス産業は拡大し続けている。

   このように重要性が増しているサービス産業は、製造業と並んで日本の経済成長の牽引役となることが期待されている。しかし、サービス産業が抱える課題として、製造業に比べ、経験と勘に頼ることが多く、結果としてその生産性の伸び率が低いことがある。これからの私たちの生活にとって、特に科学的・工学的手法に基づいたサービス・イノベーションの取り組みは急がなければならない。

   このような背景から、人口減少が本格化する2015年度までの10年間に取り組むべき施策について、『新経済成長戦略大綱』(平成18年7月)において、製造業とともに双発の成長エンジンと位置づけられたサービス産業の革新のために、(1)サービスの生産性向上運動の推進と、(2)サービス研究を推進する研究拠点の整備が提言された。この提言を踏まえ、社会経済生産性本部を事務局に「サービス産業生産性協議会」が平成19年5月に設立され、そして研究拠点として、産業技術総合研究所(いわゆる産総研)に「サービス工学研究センター」が平成20年4月に設立された(経済産業省編、『サービス産業におけるイノベーションと生産性向上に向けて』、平成19年4月)。

   それでは、そもそも私たちが扱おうとしているサービスとは何なのだろうか?

   サービスの意味を辞書で調べると「人のために力を尽くすこと」(大辞泉)が最初に出てくる。ウィキペディアでは、サービスの特徴として「生産と同時に消費されていく」「生産と消費を切り離すことは不可能である」などを挙げている。また、米国においてサービスと言えば、しばしば軍役を意味している。このようにサービスは、多様に扱われるところにその難しさがある。

   この連載の中では、経験と勘ではない、科学的・工学的手法でサービスを極めた「ハイ・サービス」の取り組みを紹介する。

   先進的な取り組みを行っていると聞けば、また良いという評判をどこかで聞けば、まず現場を見せてもらい、そして現場で働いている人の話を聞くようにしている。業種も、小売り、宿泊、コンテンツ、運輸、観光、医療など幅広く扱う予定だ。そして、連載では、事例の紹介にとどまることなく、業種を越えて、現場での取り組みを一般化し、連載の後半で、その結果を逐次取りまとめていきたい。

   それでは、まず昭和56年(1981年)以来「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で26年間も総合第一位を守り続けている石川県和倉温泉にある旅館の加賀屋のハイ・サービスを最初に紹介する。(月1回連載)

【筆者略歴】

産業技術総合研究所 サービス工学研究センター 次長 内藤 耕氏

産業技術総合研究所サービス工学研究センター次長
サービス産業生産性協議会科学的工学的アプローチ委員会委員長
金属鉱業事業団、国際協力事業団、世界銀行グループを経て、現職。著書 ・編著に『サービス工学入門』(東京大学出版会)など。

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