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接客は「お客様理解のツール」 2008年9月5日号
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接客が良くないと、お客様はサービスの質が悪いと感じ、サービス企業は高い顧客満足を得ることができない。
この接客とは、単なるサービスの一つの要素なのだろうか?
これまで訪問してきた先進的なサービス企業は、別の視点から接客を戦略的に捉えている。むしろ積極的に接客を行うことで、結果としてサービス提供方法の効率化のみならず、高い顧客満足を同時に得ることに成功している。
例えば、この連載の第2回で紹介した旅館の「加賀屋」は、客室係の接客を、お客様理解のセンサーと位置づけている。客室係の接客現場でのコミュニケーションから得られた様々な情報で、サービスの内容や提供方法を決めている。この顧客接点起点で、サービスの内容も提供方法が設計されることから、高い顧客満足が得られるだけでなく、客室係のみならず、他の従業員の動きの無駄もなくなる。
連載の第4回で紹介した福井県の「えちぜん鉄道」は、切符の販売、乗降補助、観光案内などのサービスを乗客に提供するためのアテンダントを乗せている。しかし、本当の意味で、アテンダントが力を発揮しているのは、どのような乗客がどのように鉄道を利用しているのかを接客を通じて理解し、利用者の視点で鉄道が運行できるようになったことである。
方法論は少し異なるが、連載の第3回で紹介した回転寿司チエーンの「くらコーポレーション」も似たことを行っている。
情報技術を使い、店で実際に食べているお客様の属性、滞在時間、飲食履歴のデータを蓄積し、そこから得られるモデルから、実際の店舗で、現在いるお客様にもっとも合った寿司の提供を行っている。結果として寿司ネタの廃棄率を大きく改善し、収益に貢献している。
このように、これまで連載してきた事例を見ると、接客が単なるサービス提供のツールではないことが分かる。
つまり、先進的サービス企業では、適切な方法でサービスを提供するために、接客を通じて、お客様とコミュニケーションを図り、お客様が求めていることを引き出している。また、お客様も自分が求めるサービスを得るために、積極的に自分のニーズを表明する。このように、サービスとニーズの交換が行われているのが、接客の現場なのである。
このように接客が持つ意味は、次のようにまとめることができる。
接客のベストプラクティスのポイント (1) 接客はお客様理解のツール (2) ニーズとサービスの交換 (3) 顧客接点起点でサービス内容や提供方法の設計 (4) 顧客接点を担える人材の育成
つまり、先進的サービス企業において、接客はお客様理解の手段なのである。そして、この顧客接点で得られた情報をもとに、サービスの内容や提供方法を一人ひとりのお客様に向け臨機応変に設計しているのである。しかし、例えば多くの外食産業でみられるように、接客を行うスタッフの多くがアルバイトやパート社員に大きく依存するようになってきた。
このような状況から、セレクトショップの「バーニーズ・ニューヨーク」は素晴らしい取り組みを行っている。接客を担う販売員を育成するために、「セリングスーパーバイザー」という制度を新たに設けているのは有名である。
次回はリッツカールトン大阪のサービスについて紹介したい。
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【筆者略歴】
産業技術総合研究所 サービス工学研究センター 次長 内藤 耕氏
産業技術総合研究所サービス工学研究センター次長 サービス産業生産性協議会科学的工学的アプローチ委員会委員長
金属鉱業事業団、国際協力事業団、世界銀行グループを経て、現職。著書
・編著に『サービス工学入門』(東京大学出版会)など。
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