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「顧客重視」から「顧客起点」へ   2008年11月5日号

   この連載で、これまで紹介してきたサービスは主に対人サービス、いわゆるB2Cサービスである。もちろんこれ以外のサービスは多くの種類があると思うが、B2Cサービスの場合、サービスを提供する側と、サービスを受ける側の関係はどのようになっているのであろうか。

   テレビの経済番組、雑誌の広告で様々なサービスが紹介されている。そこには「顧客重視」「お客様第一」のような言葉がしばしば登場する。これはサービスの提供をいかに顧客に合わせていくかを言っているのである。

   しかし、これまで見てきた先進的なハイ・サービスでは必ずしもそれだけではない。実は一人ひとりのお客様から自分が提供するサービスを見つめ、そこから見えてくるサービスの不足を見つけ、結果として様々なサービスを連結させているのである。

   例えば、この連載の第4回で紹介した「えちぜん鉄道」で非常に大事にしているのがダイヤの接続である。福井駅ではJR西日本と接続し、また駅によってはバスとの接続もある。鉄道を利用する人は、複数の路線を乗り継ぎ目的地まで向かう。このようにダイヤを複数の事業者間で最適化していくことが重要なのである。

   えちぜん鉄道の素晴らしいところはその努力にとどまらない。人は鉄道に乗ることを目的としない。通勤や通学、観光、通院を含め、生活の中で移動手段としてこの運輸サービスを利用している。えちぜん鉄道の列車に乗務するアテンダントが顧客起点のハブとなり、さらに観光、飲食等に関する情報提供、サービス提供方法の改善を日々図っている。このような努力によって、えちぜん鉄道の利用者は毎年増加し、地方における生活・観光プラットフォームになりつつある。

   同様な取り組みはこの連載の第7回で紹介した「リッツカールトン大阪」でも行われている。

   顧客接点を意識的に形成し、そこで得られたお客様の気持ちを理解し、先回りしてドアマン、フロントマン、ベルマン、コンシェルジュ、レストラン、客室係が連携することで、一人ひとりにあったサービスを提供するようにしている。つまり、宿泊客は到着から出発まで様々なことを行うが、これをスタッフ全員で情報共有と蓄積を通じてサポートしているのである。期待以上のサービスを受ければ顧客は感動し、再び宿泊してくれる。

   さらにコンビニエンスストアのこれまでの進化を見ると、えちぜん鉄道やリッツカールトン大阪と同じ構造が見えてくる。当初は小売りのサービスを提供していたが、発展の過程で、代行収納、金融、宅配、チケット等の様々なサービスを取り入れ、結果として現在は私たちの生活を総合的に支援するサービスへと進化してきた。

   このように先進的サービスを見てくると、次のようにまとめることができる。

   ベストプラクティスのポイント
   (1) 顧客重視から顧客起点への視点転換
   (2) サービスのシームレスな接続と連携
   (3) 機能提供から価値形成へ
   (4) サービスプラットフォームの形成

   つまり、ハイ・サービスの現場で行われているのは単純な顧客重視や顧客第一のサービス提供ではない。顧客重視や顧客第一では、提供しているサービスの内容や提供法を改善していくところにその努力が払われる。

   しかし、顧客起点では、必要なサービスが次から次へ取り込まれ、そしてシームレスのサービスや組織、人、制度が連結されていく。その結果、前者がある特定の「機能」を提供するサービスであるのに対して、後者は顧客の「価値」を提供するサービスとなり、様々なサービスが乗っかるプラットフォームが形成されていく。

   この連載は残り3回となった。これまでのB2Cサービスから少し離れ、最近調べている地方におけるサービス、リサイクル等の環境サービスについて述べたい。

【筆者略歴】

産業技術総合研究所 サービス工学研究センター 次長 内藤 耕氏

産業技術総合研究所サービス工学研究センター次長
サービス産業生産性協議会科学的工学的アプローチ委員会委員長
金属鉱業事業団、国際協力事業団、世界銀行グループを経て、現職。著書 ・編著に『サービス工学入門』(東京大学出版会)など。

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