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地方発サービス・イノベーション(上)   2008年11月15日号

   製造業の多くが海外に移転し、また人口減少が本格化し、少子高齢化も進み、地方経済をどのような戦略で活性化していくのか大きな課題である。このような深刻な状況にある地方において、元気なサービスがある。次回とあわせ、ここではこれまで紹介してこなかった地方のサービスについて述べたい。

   例えば、「富士宮やきそば学会」がそれである。富士山麓のご当地グルメの「やきそば」の良さを伝えるために2000年に設立された市民団体である。富士宮やきそばは、通常のやきそば麺に比べ硬く、焼くときも肉カスとして豚の背脂(ラード)を入れ、最後にイワシの魚粉を入れて食べる素朴な庶民の味で50年以上の歴史がある。

   学会では、メンバーが市内の店舗を調査する「やきそばG麺」、観光バスによる富士宮へのツアーの「ヤキソバス」、やきそば屋台を派遣する「ミッション麺ポッシブル」等、様々なイベントを企画し、テレビや新聞で取り上げられるようにしている。その結果、観光客が右肩上がりとなり、今では60万から70万人が年間訪問するようになり、大きな経済効果を地元にもたらしている。

   同じような活動を行っているのが、八戸を中心に家庭で食べる大衆食材のせんべい汁を、飲食店とは異なる立場からプロモーションする「八戸せんべい汁研究所」である。せんべい汁は、地元では食べられていたが、全国展開できる食材としての認識はなかった。

   このせんべい汁は総花的なプロモーションは行わず、マスコミを通じて集中的に情報発信を行い、カリスマ店を育成している。それまで八戸にはせんべい汁の専門店はなく、基本的には居酒屋のメニューの一つでしかなかったが、今では全国的に知られるご当地グルメになった。

   滋賀県東近江市にある道の駅「愛東マーガレット・ステーション」も年間40万人が訪問する。花畑の摘み取りが大きな魅力で、観光ツアーにも組み込まれ、冬季は地元の野菜や果物の販売を行っている。遠いところから来て満足してもらえるよう、地元産しか売らず、地元農家と協力し、夕食の献立が揃うぐらいの種類を揃えるようにしている。滞留時間を長くするようにし、リピーターを増やし、通過地点ではなく目的地化してくれるよう、マスコミに注目されるイベントを頻繁に開催している。

   地方ではないが、大阪の天神橋商店街の近くにある上方落語の寄席である「繁昌亭」がある。上方落語の定席がなかったことから、上方落語協会、天神橋商店街、天満宮が協力し、2006年9月に開所した。この繁昌亭ができて、平日、休日の違いなく立ち見が出るほど賑わい、商店街へのテレビや雑誌の取材も多く、注目度が上がり、商店街自身が活性化している。繁昌亭と商店街の間の相乗効果が起こっている。

   以上のように、地方であることをデメリットとせず、地元で長く支持されている食材や文化という地域資源を発掘し、地元が連携と協力し、全国規模の情報発信を通じて集客している共通点が興味深い。
(次回につづく)

【筆者略歴】

産業技術総合研究所 サービス工学研究センター 次長 内藤 耕氏

産業技術総合研究所サービス工学研究センター次長
サービス産業生産性協議会科学的工学的アプローチ委員会委員長
金属鉱業事業団、国際協力事業団、世界銀行グループを経て、現職。著書 ・編著に『サービス工学入門』(東京大学出版会)など。

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