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地方発サービス・イノベーション(下)   2008年11月25日号

   前回は、サービス産業というよりは、むしろ地域振興や市民活動というキーワードが似合う活動について紹介した。ただ、注意しなければならないのは、紹介した取り組みのいずれも、様々な人を魅了し、高い集客力を持っている。そして、それらは飲食業や小売業、興業活動という点でも大きな成果を出している。

   今回、ここで紹介しようと思う地方におけるサービスは、経済活動を営み、そして地方であることをデメリットとしない企業である。

   関西方面では「有田みかん」は誰もが知っている。和歌山県の地域特産品で、関東方面ではなかなか購入できない。この有田みかんをネットショップで販売しているのが紀伊国屋文左衛門本舗を運営する株式会社とち亀物産である。もともとは和歌山県湯浅町で蒲鉾などのねり製品を製造し、その後に食品卸から流通にシフトし、2000年にネットショップを開始した。

   当初は、全く誰も買わず、非常に厳しい状況であった。普通にやっていてはうまくいかないことに気づき、売りたい商品ではなく、情報収集を行い、客に耳を傾け、客の欲しい商品として地元特産のみかんを売り始めた。このような努力の結果、売上は少しずつ増え、昨年の暮れは月に1万5千件の注文があったとのことである。固定客比率が高く、また新規顧客は口コミで獲得している。

   とち亀物産が注意しているのがみかんの品質である。みかんは、生っている木の中の位置によって味が異なる。また、みかんは小さいほうが美味しい。さらに、傷のあるみかんは、多くの場合、木の外側で生っており、太陽を多く浴び、美味しいのは地元では当たり前のことのようである。

   現在の大規模物流では、小さいみかんや傷のあるみかんは廃棄され、結果としてスーパーで販売されているみかんには味のむらが出る。この味の標準化のために、とち亀物産では、みかんの多くを農家から直接調達し、個別に宅配している。

   このように徹底的に品質にこだわり、大規模物流を個別宅配に切り替え、みかんを直接消費者に届けることで、通常の市場よりも高い価格で農家から買い取り、通常と同じ値段で、おいしく、そして新鮮なみかんを消費者の届けることを可能にしているのである。

   山形県庄内地方の食品をカタログやインターネットで販売しているのが、ハイ・サービス日本300選受賞企業の清川屋である。庄内地方の特産品のだだちゃ豆やサクランボを販売し、また地元のレストラン等とともにケーキやプリンの特産品開発も積極的に行っている。

   清川屋が気を使っているのがやはり商品の品質である。地元で美味しくても、流通過程で品質が劣化してしまうと、その良さが消費者に伝わらないからである。例えば、トラックで輸送するとプリンは液状化することから、地元の店舗ではプラスチックのカップに入れて販売されているものを、実験を繰り返し、宅配する場合、振動を押さえるために、重いガラスのカップに切り替えた。また、サクランボも痛みやすいため、保冷財を乗せて発送し、受取日に食べてもらうようメッセージをつけている。

   このように、二回に分けて紹介した地方発サービス・イノベーションを見ると、次のようにまとめることができる。

   ベストプラクティスのポイント
   (1) 地域資源の発掘・有効活用・開発
   (2) 的確な情報発信
   (3) 徹底した品質管理
   (4) 流通構造の変革

   つまり、農林水産業とサービス産業が密接に連携し、地方であることをデメリットせず、現地で長く支持されている食材・料理、文化・風土、特産品、景観等の地域資源情報を消費地に届け、生産者と消費者の両方に価値をもたらしていることが分かる。

   この連載は次回が最終回である。サービスは非常に多様で、この12回の連載ですべてカバーすることはできない。最終回は、これまでのまとめと、私が今調べているリサイクル等の環境サービスについて少し触れてしばらく筆を置きたい。

【筆者略歴】

産業技術総合研究所 サービス工学研究センター 次長 内藤 耕氏

産業技術総合研究所サービス工学研究センター次長
サービス産業生産性協議会科学的工学的アプローチ委員会委員長
金属鉱業事業団、国際協力事業団、世界銀行グループを経て、現職。著書 ・編著に『サービス工学入門』(東京大学出版会)など。

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