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ハイ・サービスの法則   2008年12月15日号

   今回の記事で連載は最後となる。さまざまなハイ・サービスの現場における取り組みを紹介してきた。可能な限り異なる分野のサービスを事例として、分野を超えて応用できるポイントを紹介してきた。

   この最終回では、全体を通して見られるハイ・サービスの共通項についてまとめたい。

   まず述べなければならないのは、サービスという行為が持つ意味である。この連載の中で何度も指摘してきたが、サービスはお客様を理解するツールなのである。人はサービスを受けるために自分の要望を表明する。つまり、ハイ・サービスではサービス現場でニーズ分析を行い、適切な内容と方法でサービスを提供している。

   次にみられる大きな特徴は、顧客を顧客群として捉えるのではなく、一人ひとりの「個客」の価値を創造するところに強い関心を持っていることである。そうすることで、提供するサービスのコモディティ化を回避し、価格競争にならないようにしている。しかし、このためには個客理解が重要となり、顧客接点でのサービスが重要となる。

   そもそもサービスの価値はそれを受ける側の状況に大きく依存する。したがって、サービス産業はいかにこれらを理解し、その変化に対応して変化し続けられるかが大きなポイントである。つまり、同じことを続けるだけでなく、状況の変化に合わせて、サービスの内容や提供方法を変えていく必要がある。

   そして、重要なのが、一つのサービスを顧客のニーズで最適に設計するだけでは不十分であるということである。人はさまざまなサービスを利用しながら生活している。多くのハイ・サービスは、異なる種類のサービスを連携させ、一人ひとりの価値の創造を図っている。つまり、異なるサービスを個客起点でシームレスに接続させているのである。

   このように、多くのハイ・サービスの現場では、サービスの提供を通じて、顧客接点で個客一人ひとりのニーズを理解している。そして、状況に合わせ、個客起点でさまざまなサービスを接続し、機能の提供ではなく、一人ひとりの価値を創造しているのである。

   地方におけるサービスは、これらのポイントに加え、農林水産業とサービス産業の密接な連携が重要となる。そして、地元で長く支持されている食材・料理、文化・風土、特産品、景観等の地域資源情報を全国規模に発信し、生産者と消費者の両方に価値をもたらしている。

   これまで12回にわたって連載し、ハイ・サービスのポイントをまとめてきた。しかし、サービスは多様で複雑である。この連載の中で、例えば医療や介護、教育、行政といった公共サービスについての検討は行っていない。リサイクルやメンテナンスなどの環境サービスも、今後の持続型社会の実現にとって重要となる。さらに、サービス産業のグローバル展開は、今後の少子高齢化の状況を鑑みれば非常に重要な政策課題であるが、今のところ仮説すら持っていない。やらねばならないことがいまだ非常に多い。

   現在は環境サービスの先進事例の調査分析を行っている。どこかで結果を報告したいが、とりあえず今回で筆を置くこととする。

   ベストプラクティスのポイント
   (1)サービス現場でニーズ分析
   (2)顧客から個客へ
   (3)状況変化への適応
   (4)サービスの連携・接続


【筆者略歴】

産業技術総合研究所 サービス工学研究センター 次長 内藤 耕氏

産業技術総合研究所サービス工学研究センター次長
サービス産業生産性協議会科学的工学的アプローチ委員会委員長
金属鉱業事業団、国際協力事業団、世界銀行グループを経て、現職。著書 ・編著に『サービス工学入門』(東京大学出版会)など。

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