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筆者は労働時間に関する調査を実施してきた。1カ月(30日)を調査対象期間としたとき、労働時間が、24時間×30日‖720時間を超えることはあり得ない。もちろんそのような回答は無回答として処理する。しかし、ときには「600時間」というような回答があらわれる。日々20時間労働し、休日は1日もない…。
今回から数回における話題は、筆者が実施した2005年6月の調査データをもとにしている。対象は日本全国の正社員1300人ほどである。対象者は正社員、期間が1カ月ということから、残業やサービス残業も含めたすべての労働時間が120時間以上、300時間までの人を対象とした。中には600時間の人もいた。しかし、誤記入である可能性や全体の平均に与える影響を考えて入れないことにした。
全体の85・7%が残業をしていた。残業の平均時間は34・6時間であった。男性は39・1時間、女性は22・3時間。女性のほうが男性よりも残業時間が短いのは他の調査でも同じだが、残業が全くなかった人は男性で11・3%、女性で21・4%しかいなかった。男性の約9割、女性でも約8割の人が残業をしている。
1カ月で80時間以上もの残業をした人は男性で10・7%(女性2・8%)であった。1カ月で80時間以上とは、もしこの人たちが脳・心臓疾患などで死亡した場合、過労死として認定される可能性が非常に高くなるレベルである。そのような人々が男性正社員の1割を占めている。
職種でも相違が見られた。残業時間の平均が長いのは、営業・販売職、技術系専門職、輸送・運転職、現場監督職などであった。
注目すべきは、勤務時間制度による相違である。通常の勤務時間制度の平均34・4時間に対して、裁量労働制で49時間、時間管理なしで56・8時間となった。これは、勤務時間制度に(表面的な)柔軟性があるほど残業が多いということを意味している。昨今問題になっている「名ばかり管理職」の人々は、「時間管理なし」という建前になっているのに、実態はかえって長時間労働であるということを、筆者の調査データは示唆している。
残業をする人のうち、サービス残業をした人は約半分であった。そもそも賃金を支払われない残業をした人が半分もいるということは、大問題であろう。サービス残業を1時間でもした人たちの平均は28・6時間もあった。月に30時間近くもサービス残業があるのだ。1時間2000円と仮定しても、月に6万円の手当をもらい損ねていることになる。
サービス残業をするか、しないかという分析を試みた。「する」については、営業・販売職、医療・教育関係の専門職、建設業、卸売・小売業などの属性が特徴として表れた。「しない」では、フレックス・タイム制が適用されているという属性が表れた。これの意味するところは重大である。筆者が思うに、フレックス・タイム制とは、個々人で異なる実際の勤務時間をタイムカード、IDカードなどで客観的・合理的に把握しなければなかなかできない制度である。勤務時間を客観的・合理的に把握するということは、サービス残業を生まない可能性があることを示している。もちろん機械で把握するにも抜け道はあるだろう。しかし、時短のための第一歩がそこにあるような気がしている。
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【筆者略歴】
労働政策研究・研修機構 主任研究員 小倉一哉氏
1993年早稲田大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。早稲田大学助手、日本労働研究機構を経て、2007年から現職。著書に「エンドレス・ワーカーズ」(日本経済新聞出版社2007)など。
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