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正社員のほとんどの人は残業をしている。残業をするのは、「手当が欲しいからだろう」とか、「つきあいで残っているだけだろう」とか、「ダラダラ仕事をしているからだろう」というような見解は、けっこう耳にする。本当にそうなのだろうか。
図は、筆者の調査で正社員に質問した結果である。つきあい残業に意味合いが近い「帰りづらい」は一〇・八%、「残業手当が欲しいから」は四・六%、「ダラダラ残業しているから」は四・五%だった。実際に正社員として働いている人に聞くと、先の見解が「偏見」に近いということがおわかりいただけるだろう。そのような人々は、少数派なのである。
もっとも考えなければいけないのは、「業務量が多い」に約六割の人が回答しており、また「自分の仕事だからきちんと仕上げたい」に約四割の人が回答していることだ。「業務量が多い」とは、所定労働時間内では完了しないほどの業務量があるという意味だ。もちろん個々人の生産性(能率)は異なるから、同じ仕事を同じ分量やっても、残業する人としない人がいる可能性はある。しかし、六割もの人が「業務量が多い」と回答していることは、個々人の生産性の問題ではなく、全体的かつ恒常的に業務量が多いのだと筆者は考える。そうでなければ、多くの正社員の能率が悪いことになってしまう。ごく一部の優秀な社員を基準にすればそうかもしれない。しかしそんなことで多数派の人々が納得するわけがない。同時に、「自分の仕事だからきちんと仕上げたい」という回答が四割を占めることも、日本人の働き方を表している。勤勉なのだ。
そして難しいことに、「業務量」と「自分の仕事」のどちらも選択した人がかなりいる。この二つに限って、どちらかだけが○、他方が×であるのなら、その人が残業をするのは「会社のせい」もしくは「自分のせい」という割り切りもできるだろう。しかし、日本人にはその両方ともある人が結構いる。比率で見れば、両方とも選択した人は二三・四%、「業務量」○(「自分の仕事」×)が三六・四%、「自分の仕事」○(「業務量」×)が一七・三%、どちらも選択しなかった人(その他の項目を選択)は二二・九%だった。残業を削減するためには、このような複雑さも考慮しなければならない。
「業務量が多い」を選択した人の特徴は、職種に表れた。研究開発などの技術系専門職では、実に七五・八%の人が回答している。また医療・教育関係の専門職で六九・三%、調査や法務などの事務系専門職で六六・七%となった。専門職の人たちに多いのだ。他方で「自分の仕事」では、総務・人事で五三・八%、医療・教育関係の専門職で四八・二%、一般事務で四五・七%などが高かったから、「業務量が多い」のほうでより特徴が明確に表れているといえる。専門職ほどそうなのだ。定型的な仕事よりも、「終わりが見えない仕事」が多い専門職。中には、途中段階でそれほど完成度を高めなくてもいいのにと思えるような人もいる。成果主義の悪影響だろうと筆者は推測している。
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【筆者略歴】
労働政策研究・研修機構 主任研究員 小倉一哉氏
1993年早稲田大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。早稲田大学助手、日本労働研究機構を経て、2007年から現職。著書に「エンドレス・ワーカーズ」(日本経済新聞出版社2007)など。
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