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長時間労働と健康   2008年6月25日号

   長時間労働は働く人々の健康にどう影響するのだろうか?もちろん健康状態、生活スタイル・環境などは人によってまちまちだから、個々人への影響は様々である。しかし相対的に見たときに、どのような影響が主流かを紹介することは意義がある。なぜなら、どのような対策も、どのくらいの人々が問題を抱えているかを前提に考えるからである。

   JILPT調査では、食事、睡眠、運動のそれぞれの充実度を質問した。一カ月の総労働時間の長さによってそれらの充実度を見たところ、顕著な違いは睡眠に表れた。つまり、労働時間が長い人ほど、睡眠を十分に取っていないのである。この事実は、総務省「社会生活基本調査」などでも同様である。人は、労働時間が長くなっても、社会的な付き合いや食事などの生理的な活動に費やす時間より、睡眠時間を先に削る傾向にある。一日くらいなら「寝だめ」もできるかもしれない。しかし長期的に短い睡眠時間で過ごすと、脳・心臓疾患などのリスクを高めることは、医学的にもある程度、証明されている。平均的には、一日7〜8時間の睡眠を取ることが重要だとされている。24時間のうち、労働と睡眠を除いた時間に8時間くらいは必要だろう。したがって法定労働時間の8時間とは、人が健康的に生きる目安にもなっているのだ。ただし、通勤時間が往復四時間というような人の場合、残業がなくても、平日のプライベートな時間は非常に少なくなるだろう。

   一カ月の総労働時間を200時間で二分し、同時に「働く時間が長い」というストレスを感じている人と感じていない人に二分して、四つのグループを作成してみた。注意しておきたい事実は、以下のようなものである。「200時間以上・ストレスあり」の場合、「昨年に比べて労働時間が増えた」場合に、該当する。このことは、労働時間の増加がストレスを強くするということだ。また相対的に見ても、労働時間の増加とストレスとはプラスの因果関係にある。当たり前だが、改めて強調しておきたい。「200時間未満・ストレスあり」というグループでは、「女性」「中学生以下の子供がいる」といった属性が、該当した。一カ月の総労働時間が200時間未満とは、あまり残業などをしていないことになる。それにもかかわらずストレスを感じるのは、主たる家庭責任を担っている女性、そして食事などの世話を必要とする子供がいる場合である。男性正社員を念頭に置いて労働時間を考えれば、育児短時間勤務の女性の労働時間は短いだろう。しかし、家事育児などを担っている女性にとっては、所定労働時間でさえも十分に長く感じることがあるのだ。また、うつ病による休職後に復帰した人なども、いきなり残業込みの長時間労働では、再び健康を悪化させることになりかねない。それぞれの人の置かれた状況を考えて、勤務時間などを配慮することが求められる。

   筆者の友人にも、うつ病で休職している人がいる。彼は自分を弱い人間だと思っている。本当に弱いのだろうか?冷たい成果主義、職場コミュニケーションの減少、そして過剰な労働時間。それらの難敵を倒さなければ普通に生きていけないような世の中で良いのだろうか。

【筆者略歴】

労働政策研究・研修機構 主任研究員 小倉一哉氏

1993年早稲田大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。早稲田大学助手、日本労働研究機構を経て、2007年から現職。著書に「エンドレス・ワーカーズ」(日本経済新聞出版社2007)など。

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