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「時間管理の緩やかさ」とは?   2008年7月15日号

   2006年は、「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)」の導入を巡る議論が活発化した。この制度は、労基法四一条の「管理監督者」や、三八条の「みなし労働時間」以外の人々、特に課長職一歩手前のような人々に対して、労働時間管理を大幅に緩和することを意図したものだった。「成果や業績が重視される労働者には、労働時間に応じて賃金を支払うのはおかしい」という経営側の主張に対し、「残業代不払い制度にすぎない」という労働側の反論が勝り、結局は立ち消えになった。

   最近は外食産業、小売業などで「名ばかり管理職」の問題も大きくなっている。こちらは、労基法四一条の「管理監督者」ではない人々が、「管理監督者」と同様の扱いを受け、事実上「残業手当」が払われていないことを問題視するものだ。

   現在、「課長」と「部長」を合わせると、雇用者の11%くらいになる(賃金構造基本統計調査・100人以上企業)。また、「みなし労働時間」の適用労働者は8%くらいだ(就労条件総合調査・30人以上企業)。これらの人々も、すでに労働時間管理を大幅に緩和されており、あわせてすでに2割弱いるということは、実はあまり議論されていない。

   筆者の調査によれば、「課長」以上の「管理職」、及び「みなし労働時間」が適用されている労働者の労働時間は、それら以外の労働者よりも長かった。前者(時間管理が緩やかな人々)は、1カ月の総労働時間(平均)が210・8時間で、後者(それ以外の人々)の196・7時間よりも約14時間長かった。また仕事を家に持ち帰る頻度でも、時間管理が緩やかな人々のほうが多い。さらに重要な事実発見としては、時間管理が緩やかな人々のほうが、仕事志向であることもわかった。したがって、時間管理が緩やかな人々は、それなりに仕事に積極的であるといえる。この点は、残業問題を扱った第三回でも述べたが、日本人の複雑さを示している。

   労働時間に応じて賃金を支払うことが適さない仕事の人はもちろん存在する。しかし実態から見て、「時間管理の緩やかさ」が文字通りになっていないことが問題なのである。通常の残業代が払われない(深夜業などはこの限りではない)ということは、自らの裁量によって労働時間を自由に決められるということと表裏一体でなければならない。自らの裁量で労働時間の長さを決めるとは、言い換えれば、自分の業務量を自分で調整する権限があるということでもある。多くの人は生涯のうち、バリバリ働きたい時期と、少しペースを落として働きたい時期があるのではないか。ところが実態がそうではなく、多くの人がいわば「走りっぱなし」なのだ。

   雇用労働者である以上、時間管理が緩やかであっても、すべて自由に自分の業務量を決めることはできない。それは理解しなければならない。しかし現在の状態は、制度上「時間管理が緩やか」である人のほうが、労働時間が長い。これは制度と実態がかけ離れていることを意味する。走りっぱなしの人生が最高という人もいるだろう。だがほとんどの人は仕事だけでは人生は終わらない。

   退職後に充実した人生を送るためにも、仕事以外の何かを持っていることが重要だと思う。

【筆者略歴】

労働政策研究・研修機構 主任研究員 小倉一哉氏

1993年早稲田大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。早稲田大学助手、日本労働研究機構を経て、2007年から現職。著書に「エンドレス・ワーカーズ」(日本経済新聞出版社2007)など。

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