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過去7回にわたって、日本の長時間労働の実態を紹介してきた。
残業なし、休暇をすべて取るという姿を想像することは難しいと思われた人が多いだろう。筆者も、そのような状況が近未来に実現するとは思っていない。また、日本では勤勉こそ美徳なのだから、むやみに時短を叫ぶべきではないと考える人もいる。しかし、多くの人々の心身の健康を冒し、ワーク・ライフ・バランスを阻害している状況を肯定する必要はない。勤勉とは、必ずしも長時間労働とは限らないのだから。
どうしたらよいのだろうか。答えは一つではない。そしてケース・バイ・ケースである。
休暇改革に成功した企業では、休暇計画を事前に策定する。それが計画通りに実施されているかを、毎月チェックしている。計画通りに実施されておらず、休暇が取得されていない場合、その部署の管理者を呼び出して注意する。
長時間労働が恒常的な建設業界において、休日確保や残業削減に成功した企業。建設現場の作業員のロッカーに、全作業員の勤務日程表を貼り付けた。そこには、誰がいつ休暇なのかだけでなく、誰が早番担当なのか、朝礼担当なのかなどが細かく記されている。コンクリートが固まる時間を想定して、午後遅くの流し込みはやめた。
長時間労働が原因で、女性の退職が相次いだ企業。トップダウンで在宅勤務を導入。家庭責任のある女性だけでなく、すべての従業員に週1〜2日の在宅勤務を認めた。同時に、在社時間を短くするよう、全社的に労働時間管理を整備した。辞める女性はいなくなった。
これらの例から明らかなように、筆者が最も重要と考えることは、休暇も含めた労働時間管理である。きちんと管理していないから、サービス残業や年休未消化が横行するのではないだろうか。もちろん、きちんと管理していても、長時間労働が直ちに解消するとは限らない。問題の解消に向けて重要なことは、まず何よりも現状の把握にある。どの部署の労働時間が長いのか、従業員たちは今の労働時間についてどのような不満を感じているのか、そういうことを把握することが先決である。そして次にできることは、それぞれの会社や部署によって異なる。現場のことを一番理解している者が、どうしたらよいかも一番よく知っているはずだ。経営者、管理職、そして働く人々全員が効率よく働き、なるべく残業をせずに、休日や休暇も確保するという共通の目標を持てば、いずれ結果は出てくると筆者は思う。
法律や監督行政の問題もある。限られた権限、人員、予算の中でも、できることはあるだろう。ただ残念ながら、それについて論じる紙幅はない。そして個々の読者の方々により近いことを述べた方が生産的だとも思った。
人生のある時期、長時間労働になることはある。しかし一生長時間労働であることは、心身の健康悪化や家庭崩壊につながり、定年後の人生にとっても問題だ。仕事は人生にとってとても重要なことだが、人生のすべてではないということを、そして働くすべての人にプライベートな生活があるということを、想像して欲しい。
長時間労働の解消がより多くの人の幸福につながれば、この国はもっと良くなる。
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【筆者略歴】
労働政策研究・研修機構 主任研究員 小倉一哉氏
1993年早稲田大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。早稲田大学助手、日本労働研究機構を経て、2007年から現職。著書に「エンドレス・ワーカーズ」(日本経済新聞出版社2007)など。
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