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<事例・上>チームマネジメントへの挑戦 2008年12月15日号
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根本的な解決のポイントを引き出す
今回は事例にそって問題を見ていきたいと思います。
「最近、部長が話しかけてきて気持ち悪いんですが、何かやっているんですか」A社自動機事業部で設計を担当する社員の声です。仕事の指示以外で部下に話しかけるなんてことは、今までの部長ならまず考えられない出来事。部長が自分の仕事のスタイルを自ら変えはじめた兆候でした。
この事業部は、半導体製造装置メーカーであるA社の一部門で部員数は約200人、七つの部から構成されています。いずれの部も現場の技術者は課長も含めて多忙を極めていました。年々厳しくなる納期・価格・性能に対する顧客からの要求、急増してきた顧客先で稼動中の装置に対する改造要求、環境・安全などの法規制を含めた社会的要求の高まりなどによって、需要低迷期の人員削減も影響して、業務量が飛躍的に増えていたからです。
部長たちも事業部内はもちろん、本社主催の会議への出席や資料づくりに忙しい状況でした。しかし、もともと「ものづくり」の仕事がしたくて入社し、働きがいを感じてきた人たちですから、部品選択や図面チェック、実験結果の検証などの設計実務からもなかなか離れられず、部下たちが帰ったあとも遅くまで仕事をする状態が続いていました。「1週間近く、指示以外に社員と話す時間がゼロだった」と語る部長もいたほどです。
こんな状況でしたから、現場には「本来部長がやるべき仕事ができていない」という不満が渦巻いていました。「戦略を考える人がいない」「クレームや改造要求に関する業務もその場しのぎの対策だけで終わっている」「会議は多いが決めるべきことが決まらない」「部下を育てようという姿勢が感じられない」「部長以下全員で目の前の仕事をさばいている」「部長同士が話し合う姿を見たことがない」などです。
事業部長も、戦略、意思決定、人材育成、顧客の変化への対応などマネジメントに関わる問題が解決されないので、部長層の仕事に不満を持っていました。しかし、部長一人ひとりにやるべきことを要求するだけではたいした変化はなく、人材開発部門が行うマネジメントスキルの研修も現実の問題の解決にはつながっていませんでした。
この状況に対して、相談を受けた私は、まず7人の部長一人ひとりにじっくりと話を聞いてみました。彼らには「マネジメントができていない」という自覚がしっかりとありました。それでも行動を変えずに、実務に手を出し続けることは論理的に矛盾しているのですが、忙しい現場を助けるためという言い訳にも近い理由が彼らを納得させていました。
対話を続けていくうちに、部長たちが見えない壁にぶつかっていると感じたのは、7人が一様に事業部長に対する不満を吐露したときでした。実はこの不満が、マネジメントに時間を割けない自分たちを納得させるもうひとつの理由になっていたのです。
問題の当事者は多くの場合、問題を自覚しています。それでも、解決への行動が起こりにくいのは、自分の中に解決へと踏み出せない合理的な理由をつくっていて、それなりに自分を安定させているからです。次回は、その状態が崩れて行動が変わり、部長が話し合いを始めるプロセスを見ていきます。
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【筆者略歴】
スコラ・コンサルト プロセスデザイナー 長野 恭彦氏
大手電機メーカー勤務を経て現職。幅広い業界の企業風土改革に関わる。
著書に『ここから会社は変わり始めた』(共著、日本経済新聞社)。
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