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転職者を受け入れる際に注意する点は 2007年12月5日号
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【事例】 X社の技術開発部長であったAは、X社と競業するY社の技術部長B(Aとは大学の同級生であった)の勧誘でX社からY社に転職した。Y社がAの採用にあたって留意すべき点は何か。
企業秘密の保護というと、とかく自社の機密情報が社外に流出しないように、または競合他社などに不正に利用されることがないようにするにはどうしたらよいのかという点ばかりに目が向きがちであるが、もう一つ忘れてならないのは、他社の機密情報が自社に混入しないように注意するという点である。
この他社の機密情報が自社に混入してしまうことをコンタミネーションと呼ぶ。新卒者を採用する場合には格段の配慮は不要であろうが、事例のように、即戦力になる転職者を採用(特に転職前の企業で相当程度の役職に就いていた者を採用)するにあたっては、その転職者を介して、他社の機密情報が自社に混入することによって、転職者が元の会社との間で思わぬ法的トラブルに巻き込まれる危険性がある。
著者の扱った案件で、転職者が元の会社(転職元企業)の顧客情報を転職先企業において利用し営業活動を行った結果、転職先企業が転職元企業から、営業の差止めを請求され、営業活動を中断せざるを得ない事態に陥ってしまったという事案がある。
転職者を採用するにあたっては、まず面接段階で、転職希望者が元の会社との間で秘密保持義務や競業禁止義務を負担していないか、仮にこうした義務を負担しているのであれば、その内容はどのようなものなのかを確認する必要がある。確認の方法としては、転職希望者が元の会社との間で秘密保持契約などを結んでいるような場合には、その契約書を転職希望者から提示してもらうという方法がある。しかし、現実には企業と従業員との間で、かかる秘密保持契約書を交わしている例は少ない。むしろ、従業員が会社に誓約書を差し入れているケースが多い。転職希望者が誓約書のコピーを持っている場合には、それを提示してもらえばよいが、誓約書を会社に差し入れただけで本人がそのコピーを持っていない場合や転職者が契約書や誓約書そのものを第三者に開示してはならないという義務を会社に対して負担しているような場合もある。このような場合、転職希望者から元の会社に負担している義務の内容を口頭で確認し、採用担当者の方で、その聴き取り記録を残しておくしかないであろう。さらに、転職者を正式に受け入れた後に、転職者から「他社の秘密情報をその承諾なく、貴社に開示もしくは貴社で利用いたしません」「他社において完成させた職務発明等を貴社名義で出願いたしません」といった内容を記載した誓約書を差し入れてもらうことも重要である。
肝心なことは、転職者を受け入れるにあたり、採用担当者の方でコンタミネーションに関する注意義務を尽くしたといえるような証拠を整えておくことである。
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【筆者略歴】
弁護士・米国公認会計士 佐藤孝幸氏
弁護士・米国公認会計士・公認内部監査人・公認金融監査人。『実務契約法講義(第2版)』(民事法研究会)など著書多数。
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