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退職に伴う秘密保持契約   2008年1月25日号

   Q.当社では退職時に社員から会社に対して秘密保持義務を負担する旨の誓約書を提出してもらっているが、法律上留意すべき点は何か。

   A.多くの会社の就業規則には社員の在職中の秘密保持義務について規定されているが、中にはこうした秘密保持義務は退職後も効力を有すると付け加えられているケースもある。原則として、就業規則の規定は社員の在職中のみ効力が認められるとされており、退職後の社員の行動についても就業規則で一律に規律するのは無理がある。そこで、在職中に秘密情報にアクセスしていた社員が退職する時には、その社員との間で秘密保持契約を結んだり、会社に対し秘密保持義務を負担する旨の誓約書を提出してもらうことが必要になる。しかし、人事担当者の中には、こうした秘密保持誓約書の法的効力について疑問を抱いている方も少なくない。本稿では、退職社員との秘密保持契約の法的拘束力を高めるためのポイントを概説する。

   1.何が「秘密情報」なのかを特定する

   秘密保持義務の法的拘束力を高めるためには、何が秘密保持義務の対象となる情報なのかについて、義務を負担する退職社員が判断できる程度に明確になっていることが必要である。この情報は会社の承諾なく利用することができるのかについて、当の本人が判断できるような約束でなければ守りようがないからである。こうした意味で、「貴社退職後も貴社の機密情報を漏洩したり、不正に利用したりいたしません」といった包括的であいまいな規定の仕方は法的にはほとんど意味がない。それでは、どのように対象となる秘密情報を特定すればよいのか。これが言うは易しいが実務的には極めて困難である。最も特定性に優れているのは、誓約書に秘密情報のリストを別紙の形で添付する方法であるが、そのようなことをしたら、仮に退職社員によって誓約書のコピーが第三者に開示された段階で秘密情報が漏洩してしまうことになり、実務的には到底採用できない。そこで苦肉の策として、(1)「〜に関するデータ」「〜についての方法」などテーマで絞り込んだり、(2)「○○ファイルに記載された情報」などその情報が存在する媒体で絞り込むといった方法がとられる(「○○ファイルに記載された〜に関するデータ」のように、(1)と(2)を組み合わせる方法をとると、より特定性が高まる)。

   2.秘密保持義務を負担する期間を明記する

   よく当社の機密情報は貴重であるから永久に秘密を保持することを求めるという担当者がいるが、永久に存続する契約というのはかえって法的拘束力を薄めてしまう。やはり契約期間は明確に限定した方がよい。それでは、どの程度の期間を定めればよいのか。それは、退職社員が在職中にアクセスできた情報の価値次第というほかない。現代は情報の価値の劣化もスピーディであるから、不相当に長い期間を定めてもあまり意味がない。

【筆者略歴】

弁護士・米国公認会計士 佐藤孝幸氏

弁護士・米国公認会計士・公認内部監査人・公認金融監査人。『実務契約法講義(第2版)』(民事法研究会)など著書多数。

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