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【事例】
全国に店舗を展開するX社の営業統括部長は1年の3分の2ほどを出張に費やしていた。そのため、あらかじめ半月分の交通費や交際費として20万円を先に渡し、後日、精算することとしていた。内部監査を行ったところ、精算がずさんであったため、2年間で300万円を超える私的流用が発覚した。
【解説】
日本版SOX法の実施基準では、内部統制は(1)統制環境、(2)リスクの評価と対応、(3)統制活動、(4)情報と伝達、(5)モニタリング(監視活動)、(6)ITへの対応の六つの基本的要素から構成されるとされている。この六つの基本要素のうちの(3)統制活動とは、経営者の命令や指示が適切に実行されることを確保するために定める方針や手続のことをいう。統制活動には、権限と職責の付与、職務の分掌といった広範な方針や手続が含まれる。私たちが一般に内部統制と聞いて思い浮かべるのは、この統制活動のことである。
統制活動は、業務のプロセスに組み込まれるべきものであり、組織内のすべての者において遂行されることによって機能する。統制活動については、(1)職務の分掌、(2)内部けん制、(3)記録と保存、(4)実地検査の四つのいずれかを採り入れたり、2、3組み合わせることによって、より効果的な内部統制を構築することが可能となる。本稿と次稿では、人事担当者に特に関係があると思われる具体的な不正事例を想定しながら、こうした従業員の不正を防止し、もしくは早期に発見可能な統制活動をいかに構築していくかについて考えてみたい。
事例のように、頻繁に交際費や出張旅費などを費消する従業員に対して、一定額を先に渡しておき、後で精算させるシステムを採用している企業も少なくない。こうした渡し切り経費は、先に現金を受け取った従業員としては、どうしても自分のお金のような感覚になってしまい、後日、精算する際に、個人的な飲食代を含めてみたり、急な出張のため正規料金で航空券を買ったが領収書をなくしてしまったなどと虚偽の申告をして金券ショップで購入した航空券代との差額を着服するといった不正が行われやすい。まずは、こうした渡し切り経費制度は廃止し、多少煩雑であっても、経費はその都度仮払いし、迅速に精算するという大原則に立ち返るべきである。経費規程において、立替経費については、60日を超えて精算手続がとられた場合には、会社は精算に応じないことができると規定している会社もある。
他の経費着服の事例としては、遠回りの通勤経路を申告して通勤費をごまかすというケースもよく見られる。こうした経費の着服は、1回あたりの金額はわずかであっても、長期間継続的に行われると発覚したときには会社の損害額は数百万円に達していたということも少なくない。申告時に通勤経路を確認する、6ケ月定期券の現物を支給するなどの方法の採用を検討するとよい。
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【筆者略歴】
弁護士・米国公認会計士 佐藤孝幸氏
弁護士・米国公認会計士・公認内部監査人・公認金融監査人。『実務契約法講義(第2版)』(民事法研究会)など著書多数。
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