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トップページ > 生産性新聞 > 知っておきたい労務管理 > 内定取り消しは解雇になるのか


内定取り消しは解雇になるのか   2006年10月15日号

   平成13年10月に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行されてから丸5年が経過した。この制度は、労働組合による紛争(集団的労使関係紛争)以外の労働者個人と企業との紛争の急増に対応して、都道府県労働局長が「助言・指導、あっせん」により紛争を迅速に解決する目的で立法化されたものである。

   当初は、労働基準監督署が民事事件に介入するのかという批判があったものの、毎年度の相談件数の増大と解決事例の拡大という実績を積み重ね、平成17年度では相談件数は90万件を超え、解決件数も1万2千件を超えてきている。

   今回の連載は、これらの事例から紛争の未然防止と企業の労務管理のあり方を学ぼうとするものである。第1回は、内定取消しを取り上げる。

■採用内定という労働契約の成立

   かつて10月といえば、就職協定による内定解禁の月であった。新卒大学生を採用しようとする企業が採用の予約を行い、採用内定者と呼ばれた。今や内定決定の前段として内々定が常識となっている。彼らは「内定予定者」と呼ばれているが、労働契約上「採用決定者」とどこが違うのか。

   企業が求人募集をし学生(求職者)が応募した段階は、学生による労働契約の申込であり、内定通知は使用者による労働契約の承諾ということになる。内々定の場合はどうか。内定予定者は、内定の通知にとどまり、その後に正式な選考が予定されている場合、労働契約の予約という特別な契約が成立したことになるが、その取消しは、解雇にはならない。但し、正当な事由がなく信義則に違反する場合には、損害賠償の責任を問われることがあるので、要注意だ。

   内定の決定は、取消し事由が記載された誓約書が提出されたことで労働契約が成立したものとされ、それ以降は労働契約締結者(内定決定者)として法により保護される。最高裁判所は、「本件誓約書の提出とあいまって、これにより、採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解する。」(大日本印刷事件【最二小判昭55・5・30】)と述べている。

■内定の取消しは労働契約の解除

   従って内定の取消しは、労働契約の解除つまり解雇である以上、合理的と認められる正当な理由が必要となる。最高裁は「(本件取消は)解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができず、解約権の濫用というべき」(前出「大日本印刷事件」)と判示している。新卒に限らず、企業が採用予定者に出社日などを通知すれば、労働契約の成立とみなされ、その取消は解雇になるということを経営者や人事担当者は理解しておくことが必要だ。

【筆者略歴】

社会保険労務士 加納明夫氏

加納人事労務研究所所長。主な著書に、「小さな会社の総務・経理・労務の仕事」(ぱる出版監修)、「中小企業のための公的助成金大活用ガイド」(ぱる出版)、「特集『パートタイマーと退職金制度』調査」(中退共)共著。
事務所ホームページhttp://members.ld.infoseek.co.jp/kano_roumu/

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