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整理解雇に対する規制緩和の流れ   2007年2月5日号

「整理解雇の4要件は、考慮要素を類型化したもの」(ナショナル・ウエストミンスター銀行事件)

●整理解雇の4要件とは

   前回、労働条件の変更方法として変更解約告知を取り上げ、「その実質は整理解雇に他ならない」とする裁判所の立場を検討した。今回はその整理解雇に関して、従来の厳しい規制を緩和する新しい裁判例の流れを紹介する。

   「整理解雇とは、使用者が経営不振の打開や経営合理化を進めるために、余剰人員削減を目的として行なう解雇をいう」(別冊ジュリスト〓165『83整理解雇』土田道夫)。

   整理解雇は、普通解雇と異なり使用者側の一方的な事情による解雇で、労働者の責に帰する事由によるものではないところから解雇権濫用法理による厳しい規制が課せられてきた。いわゆる整理解雇の4要件((1)人員削減の必要性、(2)解雇回避の努力義務、(3)人選の相当性、(4)労働者への説明、協議義務)である。

   東洋酸素事件(東京高判昭54・10・29)は、装置産業の構造的不況によるアセチレン部門の封鎖に伴う47名全員の整理解雇を巡って1審では解雇無効とされた判決が、2審で逆転の解雇有効とされた事例である。

   判決は、「解雇がやむを得ない客観的、合理的理由が存在するか否か」は、「第1に部門封鎖が企業の合理的運営上やむをえない必要に基づくもの、第2に従業員を他に充当する余地がない場合、第3に対象者の選定が客観的、合理的基準に基づくもの、以上の3要件を充足することを要し」「解雇がその手続き上信義則に反し、解雇権の濫用にわたるとき、解雇の効力が否定される」と述べ、4要件をもって整理解雇の解雇権濫用法理を確立した。

●4要件は考慮要素の類型化したもので採用しない

   バブル崩壊後日本の大企業は、リストラによる企業再建の道を求め整理解雇も様々なパターンが現れてきた。そのなかで、整理解雇の厳しい規制を加えてきた4要件を見直す判例が現れた。ナショナル・ウエストミンスター銀行事件(東京地判平12・1・12)は、「整理解雇の4要件は、解雇権濫用を判断する際の考慮要素を類型化したもので、本来個別具体的な事情を総合考慮して行なうから、債権者主張の方法論は採用しない」として4要件による整理解雇の合理性判断を「個別具体的事情の総合考慮」へと変更し、解雇規制を部分的に緩和する立場を明らかにした。

   本件は、平成9年外資系金融グループが貿易金融部門から撤退し投資銀行部門に特化する経営戦略を実行、長年同業務に従事していたアシスタント・マネージャーに合意解約を申入れ拒否されたため、雇用の継続を求めた同人を解雇した事案。第1次、2次の仮処分は、解雇無効であったが、第3次申請に対して解雇有効の逆転決定として注目された判例。その後、4要素説はワキタ事件、労働大学事件等に引き継がれ新しい流れとなっている。

【筆者略歴】

社会保険労務士 加納明夫氏

加納人事労務研究所所長。主な著書に、「小さな会社の総務・経理・労務の仕事」(ぱる出版監修)、「中小企業のための公的助成金大活用ガイド」(ぱる出版)、「特集『パートタイマーと退職金制度』調査」(中退共)共著。
事務所ホームページhttp://members.ld.infoseek.co.jp/kano_roumu/

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