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●医師による面接指導を義務化
平成18年10月、改正労働安全衛生法が施行され、時間外・休日労働が月100時間を越える労働者に対して医師による面接指導が義務づけられた。この法に違反しても罰則はなく、また法案成立の過程で労働者による申出が条件付けられたとはいえ、使用者にとっては労働基準法による時間外・休日労働への割増賃金というペナルティー以上に、過重労働による健康障害に対して重い責任を課せられたことになる。さらに面接指導の結果を記録し、必要と認められる場合は労働時間の短縮等の措置を講じなければならない。これらを怠った場合、使用者の安全配慮義務不履行は避けられないだろう。
●過重労働による健康障害を防ぐための新総合対策
厚生労働省は、平成18年度の過労死等の労災補償状況に関し、請求件数は938件(前年度比7・9%増)、支給決定件数は355件(前年度比7・6%増)と公表した。過労死の労災認定は、労働災害による死亡件数の約1割に相当する。長時間労働などのストレスが蓄積されると、脳・心臓疾患及び精神障害を発症するリスクが高まることは、医学的に知られている。平成18年3月の「過重労働による健康障害を防ぐための新総合対策」は、時間外労働が月45時間を超え長くなるほど業務と脳・心臓疾患等の発症との関連が徐々に強まり、月100時間を超えると高まるとの認定基準を示した。
過重労働によるストレスの蓄積は、業務の質差や個体差があり時間外労働の長さというモノサシで画一的に判断することができない。医師による面接指導という個別対策が叫ばれる所以である。今後も過労死が増大するならば、欧米並みに医師の権限(ドクターストップ)が強化され、望むと望まざるとに関らず、いずれ罰則付きで法制化されるであろう。
●時間外労働の限度基準と過重労働防止による両面規制
新総合対策は、月45時間などの限度基準を超える36協定の届け出に対し監督署の窓口指導を徹底すること、特に「限度基準第3条ただし書」に定める「特別の事情」による特別条項付36協定届が、諸外国より「エスケープ条項」と批判され青天井の長時間労働にお墨付きを与えているとの認識から「特別の事情」とは「臨時的なものに限る」「出来る限り最小限のものにする」という窓口指導を徹底すると述べ、労基法による指導を上回る規制を打ち出してきている。
働き過ぎは、過ぎたるは及ばざるがごとしという諺を待つまでもなく、過労死という弊害があれば正さなければならない。それは、法規制によるのか、それとも労使の自主的な努力に委ねるのか。過労死は、働くことの本当の意義とワークライフバランスのような社会的規範を労使に問いかけている。それは労働生産性の質的向上という課題でもある。
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【筆者略歴】
社会保険労務士 加納明夫氏
加納人事労務研究所所長。主な著書に、「小さな会社の総務・経理・労務の仕事」(ぱる出版監修)、「中小企業のための公的助成金大活用ガイド」(ぱる出版)、「特集『パートタイマーと退職金制度』調査」(中退共)共著。
事務所ホームページhttp://members.ld.infoseek.co.jp/kano_roumu/
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