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変形労働時間制と労働時間の特定   2007年7月5日号

●変形労働時間制度の導入

   昭和63年1月改正労働基準法が施行され、戦後40年続いた「一日8時間労働制」が、現在の「使用者は、1週間について40時間を超えて、かつ1日について8時間を超えて、労働させてはならない」という1週40時間労働制に改められた。それは、日本の長時間労働による安価で優良な自動車・電気・機械等の輸出に対して、欧米からのソーシャル・ダンピング批判、そして大幅な円高をせまる「プラザ合意」という外圧に対する日本の国際公約であり、自主規制であった。

   週40時間労働制という大幅な労働時間短縮は、人件費の増大をもたらし、日本経済の国際競争力を低下させ、成長を抑制する要因であった。政府は、週40時間労働制の実施に当って、新たな労働時間の弾力的運用の方法として変形労働時間制を導入したのである。

   それは「労働者の生活設計を損なわない範囲において労働時間を弾力化し、労働時間を短縮することを目的とする」【変形労働時間の趣旨】(昭63・1・1 基発1号)ものであった。

●変形期間における労働時間の総枠と労働時間の特定

   変形労働時間制といえども法定労働時間を遵守しなくてはならず、それは「変形期間における法定労働時間の総枠」という制約を受け、「40時間×変形期間の暦日数÷7」【変形労働時間における法定労働時間の総枠】(同前)という計算式の範囲内の時間とされた。

   さらに「変形労働時間制を採用する場合には、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しない」【労働時間の特定】(同前)とされ、各日、各週の労働時間の特定という要件が設けられ、それを超える時間外労働の範囲を明確にしている。

●時間外労働を職権で判定した最高裁

   「時間外労働となる時間は、次の時間である。(1)1日については、8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間、(2)1週間については、40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間、(3)変形期間については、変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間」【時間外労働となる時間】(同前)というきわめて煩雑な算定方式であった。

   大星ビル管理事件(最一小判 平14・2・28)において最高裁は、法曹・労働の双方の弁護団が主張していない時間外労働に関し「この点について職権で検討する。特定の週又は日につき法定労働時間を超える所定労働時間を定めた場合には、法定労働時間を超えた所定労働時間内の労働は時間外労働とならないが、所定労働時間を超えた労働はやはり時間外労働となるのである。この部分には法令の解釈適用を誤った違法があり、原審に差し戻す」と言い渡した。シンプルな制度が一番だという変形性への批判が込められている。

【筆者略歴】

社会保険労務士 加納明夫氏

加納人事労務研究所所長。主な著書に、「小さな会社の総務・経理・労務の仕事」(ぱる出版監修)、「中小企業のための公的助成金大活用ガイド」(ぱる出版)、「特集『パートタイマーと退職金制度』調査」(中退共)共著。
事務所ホームページhttp://members.ld.infoseek.co.jp/kano_roumu/

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