




|
 |
|
●事業場外みなし労働時間制度の導入
昭和63年、週40時間労働制の改正労働基準法が施行された。政府はその実施に当って、労働時間の弾力的運用として変形労働時間制を導入すると共に「法第38条の2及び3」を設けて「事業場外労働」及び「裁量労働」時間制度を整備した。
事業場外労働は「使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な業務が増加していることに対応して、労働時間の算定が適切に行われるよう法制度を整備」【事業場外労働の趣旨】(昭63・1・1基発1号)するというものであった。
整備とは、「出張、記事の取材その他事業場外で労働する場合で、労働時間を算定し難い場合」という施行規則第22条の定めがあり、「出張その他」(事業場外労働型)と「記事の取材」(裁量労働型)とが混在し矛盾する制度体系であったものを分離して、施行規則をそれぞれ基準法の条文に格上げしたことを指していた。
●「みなし」は法による擬制
「みなし」とは、反論を許さない法による擬制である。それは、事業場外で例え10時間働いても所定労働時間(例えば「8時間」)働いたとみなされ、その逆も同様。その要件は、あくまで「事業場外労働の場合において、労働時間が算定しがたいとき」に限られ、今日のような携帯電話などのモバイルの普及は、想定外であった。
事業場外のみなしは、原則として「所定労働時間労働したものとみなす」制度であり、「ただし、通常所定労働時間を超えて労働することが必要な場合、通常必要な時間労働したものとみなす」というもの。そして、「過半数労働組合(又は過半数代表者)との書面による協定があるときは、その時間を通常必要とされる時間とする」(同条2項)と定め、「業務の実態が最も良く分かっている労使間で決めることが適当であるので、できる限り労使協定を結ぶよう十分指導すること」【事業場外労働における労働時間の算定方法】(昭63・1・1基発1号)とされた。
●「一括みなし」を取消し、「別途みなし」に転換
改正当初「一部について事業場外労働に従事する場合には、当該『事業内の労働時間を含めて所定労働時間労働したものとみなされる』」(同前基発1号)とした当局の見解は、その直後「一部を事業場内で労働した日の労働時間は、『事業場外で従事した時間と、別途把握した事業場内の時間とを加えた時間となる』」【一部事業場内労働の場合の算定】(昭63・3・14基発150号)へと変更となり、煩雑な労働時間の算定が必要となったのである。
平成18年1月「今後の労働時間制度に関する研究会」は、「時間が把握できることを前提とした制度及び運営となっており、見直しの必要がある」と報告し、今国会に労働時間法制の改正案の上程が予定されていたが、見送られたことは本当に残念なことであった。
|
【筆者略歴】
社会保険労務士 加納明夫氏
加納人事労務研究所所長。主な著書に、「小さな会社の総務・経理・労務の仕事」(ぱる出版監修)、「中小企業のための公的助成金大活用ガイド」(ぱる出版)、「特集『パートタイマーと退職金制度』調査」(中退共)共著。
事務所ホームページhttp://members.ld.infoseek.co.jp/kano_roumu/
|
|