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働く意欲を起こさせる「動機づけ」 2007年11月15日号
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自己効力感と自信を持たせることが不可欠
先日、大学の卒業生に久しぶりに会った。最近「仕事が面白い」という。話の様子からは、仕事に対する強い意欲がうかがえ、自分に対する自信も生まれているように感じられた。
「仕事をしていて嬉しいことはどんなこと?」と尋ねると、次のように答えた。
「こんな地味な目立たない努力を上司はきっと見てないだろうな…」と思っていたが、ある時上司が「君は人が見ていないところでも、とてもよく努力しているね。そこが君の良さだね。そうした努力は必ずいつか成果となって将来現れるよ。これからも君に期待しているので頑張れよ」と言われたそうだ。
この上司の言葉がとっても嬉しく大きな励みと自信になったと嬉しそうに語った。そしてその後「よし、もっと頑張ろう!」という気持ちになり、やる気がますます出たとのことであった。
こうした上司の「何気ない一言」がいかに若者を動機づけ、やる気にさせているかうかがえる。こうした上司の部下へのフィードバックの重要性はこの例にも現れている。
管理監督者の重要な役割の一つは、職場のモラール(士気)を向上させ、一人一人を「動機づけ」、業績をあげることである。すなわち、部下のやる気、意欲を引き出し、能力を最大限発揮させ、高いパフォーマンスを導き出し、加えて目標達成の過程で一人一人を有能な人材として育成することである。
管理監督者は、あたかもオーケストラの指揮者のように、それぞれ個別にもつ楽器の個性の異なる音色を最大限に引き出し響かせ、かつ全体として美しいハーモニーを創造し、互いに感動を分かち合うことができるようにするのが役割である。
このように働く意欲を起こさせる背景となる「動機づけ」とは「行動にエネルギーを与え一定の方向に導く過程」と定義されている。まさに働く人々に大きな影響を与える大切な要素である。
動機づけに関する理論には、「何(what)が人をやる気にさせるか」、そして「どのように(how)動機づけるか」の二つの「動機づけ理論」がある。
まず、「動機づけ」は一般公式として次のように表される。個人の達成できる業績(P=パフォーマンス)は主にその人の能力(A=アビリティ)と意欲(M=モチベーション)との積により決定されると考えられている。すなわち「P=A×M」である。
しかし、たとえ能力が高く(10)てもやる気が低ければ(1)達成できる業績は、ほどほど(P=10×1=10)であるが、一方ある程度の能力(5)でも、やる気・意欲が高ければ(10)かなりの成果(P=5×10=50)をあげることが可能となる。いかに意欲・やる気が重要な要因であるかが分かるだろう。
しかしまた、やる気と能力があってもそれを発揮できる「チャンス」に恵まれなければ、能力を発揮することはできない。すなわち、業績(P)、能力(A)、やる気(M)だけの三つの要因の関係性だけではなく、さらに挑戦を可能とするチャンス、機会(O=opportunity)が重要性である。
すなわち、業績(P)=能力(A)×意欲(M)×機会(O)なのである。このように、能力と意欲に加えて、働く人たちが挑戦できるチャンスを絶えず一人一人に与えることは非常に重要となる。
どうしたら「意欲」を引き出し「やる気」にさせることができるか、それは単に上司の力だけでは動機づけられない。
例えば、個人の主体性、自律性を尊重する人事制度をはじめとした各制度(賃金を含む)、組織文化や風土、ワークライフバランスなども働く人の「動機づけ」に関係している。しかし、直接、働く人の意欲に最も影響を及ぼすファクターは上司であろう。
目標設定に部下を参画させ、明確な目標を共有しあい、合意と納得を得ることが達成過程のスタートには欠かせない。上司から一方的に「目標を押し付けられた」、「働かされている」という意識は、部下を目標達成に動機づけないだろう。
また、言葉に出して部下に具体的期待をかけること、そして努力をきちんと認め・誉め、成果に対し適正かつ公平な評価を与えることも欠かせない。
要するに、こうした目標達成過程を通して、部下が達成感や自己成長感を感じることができ、「自分はやればできる」という「自己効力感」や自信をもたせることが動機づけに最も欠かせない要因である。
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【筆者略歴】
法政大学キャリアデザイン学部教授 宮城まり子氏
臨床心理士。専門は臨床心理学、キャリアカウンセリング、生涯発達心理学、産業心理学。日本産業カウンセリング学会常任理事、キャリアデザイン学会理事。著書・論文多数。
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