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人材育成とキャリアカウンセリングの機能   2007年12月5日号

人材育成は「育てる」から「自ら育つ」へ

   人生の長い道程には多くの分岐点が存在している。ある意味、我々の人生は、その時々の選択の連続の中で形成されていく。目の前に存在する複数の選択肢を前に、選択に迷い悩む経験は、人生の過程のなかで誰もが多かれ少なかれ経験することであろう。こうした、迷い悩む時に人はだれに相談するだろうか。

   例えば、「自分はこのままでいいのか、他の生き方があるのではないか」、「この会社でのこの仕事が本当に自分に合っているのか、時々会社を辞めようかと迷う」、「激務に疲労しきってしまった、このままずっとこの仕事を続けていくことに意味があるだろうか」、「今、社内公募が行われているが、応募することは今後の自分にとってメリットがあるだろうか」、「育児と両立をしたいが、現在の部署での仕事を続けるかぎり両立は難しい。できる限り両立を可能にしたいが選択肢としてどのようなものがあるか」など、社内のキャリア相談室に寄せられる相談内容はこのように多様である。

   こうした選択の岐路に立った時や適正な社内情報が必要な時などに、気軽にだれもが相談できる「キャリア相談室」を社内に置いている企業はまだまだ少ない。キャリア相談の内容は、なかなか上司には相談しにくい内容も多い。

   結果、働く人は一人でこうした問題を抱えて悩み、迷い、それが長引けば長引くほどメンタルな問題も含め、様々な影響がそこから発生し、働く意欲を失ったり、離職に結びつくことなども多い。

   自分の抱える問題についてありのまま「話す」ことは「放つ」ことでもあり、ストレスの発散と同時に、「心のなかを言語化すること」によって問題を整理しまとめ、問題解決の糸口をみつけることも可能である。

   キャリアにかかわる多様な問題解決の相談にのり、個人のキャリア形成支援を行うカウンセリングを「キャリアカウンセリング」という。「カウンセリング」に対しては、マイナスイメージをもつ人も多いが、キャリアカウンセリングは人を「育て、開発する」、人材育成のためのカウンセリングとして機能する。

   キャリアカウンセリングが効果的に機能することによって、個人のキャリア開発やキャリア形成を支援し、目標達成に向けさらに動機づけ、持てる能力を最大限発揮することを通して、自ら成長発達することを側面から支援することができる。そして、メンタルな問題の発症や離職の予防などの機能も同時に果たす「予防的なカウンセリング」としても機能することができる。

   管理監督者にとって次世代の人材を育成することは重要な役割と責任であることは言うまでもない。しかし、実際、現場での管理監督者は自分のことで精一杯、きめ細かいOJT、フォローアップの時間もとれず、その都度細かく相談にのっている暇もないのが実情であろう。また、若い人にとって「上司は多忙で職場にいないことが多い」、「相談しようと思っていてもなかなかつかまらない」、「こんなささいな、つまらない相談をして多忙な上司に迷惑をかけられない」などと遠慮し、一人で問題を抱えて悩み、戸惑っていることも多い。

   今、働く人々に対し自律的キャリア開発が求められ、企業に依存せず、どこでも通用する自立型の人材、市場価値の高い人材となることが求められている。

   しかし、果たしてこれまで自分の「キャリア形成」を強く意識し、市場価値を意識しながら仕事を行ってきた人は実際にどれだけいるだろうか。「5年毎に履歴書を新しく書き換える」くらいのつもりで働き、キャリア形成を意識することが求められている現在、だれもが共通に今後の自分のキャリア形成に不安や迷いを抱えている。

   こうした問題解決支援のためのキャリア相談を機能させることは、今後の人材育成上の重要課題であると考えられる。人材は「育てる」から、むしろ一人一人が主体的に「自ら育つ」ことを可能にするような仕事の与え方、環境や社内の育成支援体制(キャリア相談を含む)を整備することが必要であると考える。

【筆者略歴】

法政大学キャリアデザイン学部教授 宮城まり子氏

臨床心理士。専門は臨床心理学、キャリアカウンセリング、生涯発達心理学、産業心理学。日本産業カウンセリング学会常任理事、キャリアデザイン学会理事。著書・論文多数。

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