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茶の湯道具 高桑の事例(上)   2007年8月25日号

   これまで小規模ながら優れた経営をしている会社を紹介してきました。今回から2回にわたって、さらに小規模なしかも地方の小さな町で、事実上たった一人で経営をしている茶の湯道具高桑(以降高桑氏)を取り上げます。

   高桑氏は岩手県矢巾町(やはば)で茶道の道具を扱っており、茶道道具の製造を行っているわけではなく、その仕入れ、販売を行っています。岩手県矢巾町とは、盛岡市に隣接するとても小さな町でその人口は2万7千人程度です。ここで高桑氏というご年配の男性が一人で商売をしております。

   そもそも筆者と高桑氏との出会いは、3年ほど前に矢巾町商工会主催の「経営革新チャンスセミナー」にてご一緒したことがきっかけでした。このセミナーは、2カ月間全6回の日程で、その目的は、顧客本位の経営を実践することにより、お客様から支持され続ける企業を目指すというものでした。

   セミナーでは、「改善・革新シート」を用いて、企業活動の現状について、市場と顧客、競争環境、外部環境といった視点からその経営のありようを明解に整理することで、「わかっている・・・」、「やっているつもり・・・」などといったことを排除し、見えていなかったこと、やっていなかったことを整理し、改善領域を見つけ出し、改善計画の立案につなげていこうとするものでした。

   このセミナーで工夫したことは、「改善・革新シート」に様々な事柄を記入する際に、受講生が一人で考えて記入していくのではなく、例えば、従業員を抱えている会社であれば、幹部や現場社員と現状を確認し合いながら記入していくようにしたことです。また、よくわからないことや不明なことは、なぜわからなくなっているのか、その原因や理由を経営者が自分で決めつけてしまうのではなく、他者と対話をすることによりそういったことをもわかるようにしていくように努めたことでした。高桑氏の場合は、このセミナーに一人で参加していたので、その「改善・革新シート」にご記入いただく際、筆者が対話の相手となり、前述したような様々な事柄をお伺いし、相互に確認していきました。

   さて、では、なぜ今回、高桑氏を取り上げたかということについてですが、それは、次のような考え方からです。これまで連載で取り上げた岡野工業のようにこれまで世の中になかったような製品を技術開発に生み出していく、そういった企画から大企業と連携していくといったいわゆる「製品開発型」の会社でもなく、また、「千葉夷隅ゴルフクラブ」のように、その地の利の悪さを跳ね返す一貫性あるサービスのよさにより、顧客との密接な関係性を築いているいわゆる「顧客親密型」の会社でもありません。高桑氏の場合は、茶道の道具を仕入れ販売し、茶道にまつわるイベントの企画からその実施を行っています。つまり、茶器やイベントの販売を通じて、茶道に関するモノや茶道にまつわるコトを売っている、いわば「価値体験型」です。このような岡野工業や千葉夷隅ゴルフクラブとはまた違った顧客価値提供のあり方を知っていただきたいと思いました。また、地元を始めとして全国にわたって数多くのお客さんを持ち、財務業績的にみてもその利益率は国内で優良とされる大手企業のそれをはるかに上回り、さらに着実に成長を続けている、そんなところだからです。 同業とは違った独自の価値提供を行い、顧客に支持されつつし、財務的な業績も好調でさらに発展しています。

   このように高桑氏は、零細ではありながら同業他社とは違った価値提供のあり方を持ち、エリアを越えた顧客をつかみ、財務的にも高いレベルを維持し、さらに成長している、まさにいい経営のお手本ともいえるべきところです。では一体、高桑氏が実現させている価値体験型経営とは具体的にどういったことなのか、また、そこでの具体的な取り組みとはどういったものなのかを次回みていきたいと思います。


【筆者略歴】
Performance Excellence Associates
(パフォーマンス エクセレンス アソシエイツ)
代表 坂本 崇氏

業績向上コンサルタント。
問題解決やコーチングのような思考とコミュニケーションの各種スキルを活用して、外資系大手コンサルティングファームから中小企業や行政組織まで、ビジネス能力の向上を経営力アップに無理なくつなげ組織の業績向上を実現している。

ホームページ  http://www.e-management.jp/

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