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メンタルヘルス不調者の職場復帰支援で最も難しいのが「復帰のタイミング」だと言います。特に、回復が十分でないうちに復帰したがる社員への対応に苦労しているそうです。
こうしたトラブルの背景には、メンタルヘルス不調の回復過程や復帰のタイミングについて、本人と関係者の認識が統一されていないという問題があります。
メンタルヘルス不調の回復過程を正確に予測することは専門家でも困難です。しかし、うつ状態を伴う休業事例では、一般的に次のような経過をたどって回復していきます。
第1段階 会社を休みはじめた直後、一時的に不眠などの症状が悪化することがあります。仕事は大丈夫だろうか、みんなに申し訳ない、本当に治るのかと不安がつのるためです(数日〜数週間)。
第2段階 本格的に休息できるようになると、一日中寝てばかりになることがあります。ごろごろと横になって過ごし、ほとんど起き上がれません(2週間〜1カ月間)。
第3段階 起き上がって、家の中の身の回りのことができるようになります。好きなことを少しだけやってみようという気持ちも出てきます。買い物や散歩など、少しだけ外出もできます(1〜2カ月間)。
第4段階 家の中の生活リズムが安定し、さらに多く外出できるようになります。ただし、人の多い場所に出かけたり、電車に乗ったりすると疲れてしまうようです(1〜2カ月間)。
第5段階 生活のリズムが出社時に戻り、通勤を模した外出が安定して行えるようになります。集中力や判断力が回復し、復職のことを落ち着いて考えられるようになります。一般的に、休業開始からここまで3〜4カ月で回復しますが、病状によっては1年以上かかることもあります。
第5段階まで来れば復職の準備が整った状態だと言えそうです。しかし、職場復帰のタイミングは、それぞれの会社の制度によって異なります。
A社では「半日勤務からスタートする、最大3カ月間のリハビリ出社」の制度があります。休業開始から3〜4カ月でリハビリ出社を開始するケースが多いようです。
B社では「コアタイムからスタートし、2週間で終了するリハビリ出社」の制度があります。A社よりもハードルが高いため、4〜5カ月かけてしっかり体調を整えてから開始するケースが多いようです。
C社ではフルタイム未満の復職を認めていません。そのため復帰前に図書館などを利用した自主的な復職訓練や、専門の支援機関での出社訓練を行っており、出社開始まで半年程度かかります。
職場復帰をスムーズに進めるためには、このような回復の過程や自社の制度を本人にタイミングよく説明し、休業や復帰への不安を取り除くことが大切です。そのためには「休業開始時から復職後まで、月に1回程度、産業保健スタッフと本人が面談を行う」という方法が有効です。
面談では、自宅での過ごし方や回復の状態を本人と一緒に確認し、主治医や家族とどんな話をしているか教えてもらいます。また、体調の変化や気持ちの変化、復職への不安について話をしながら、回復の次の段階へ進むための工夫について考えていきます。病状が落ち着いてきたら、調子を崩す要因や、調子を安定させる要因についても少しずつ話をしていきます。
こうした面談を行うしくみを作り、スキルを持った専門スタッフが本人を適切に支援することによって、回復や復帰のタイミングについて関係者間で共通の認識を持てるようになります。また体調に影響を与えるストレス要因について、時間をかけて聞き取りや評価を行うことで、職場の環境調整や再発防止に役立つ貴重な情報が得られます。
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【筆者略歴】
中外製薬 統括産業医 難波克行氏
99年岡山大医卒。内科医を経て産業医資格を取得し、05年岡山大学大学院博士課程修了。精密機器メーカー産業医を経て、08年から現職。 ブログ「ELECTRIC DOC.」 http://e-doc.no-ip.com/
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