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職場復帰支援(1)〜仕組みだけではうまくいかない〜 2008年6月15日号
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メンタルヘルス事例の対応で最も悩ましいのは、職場復帰の場面ではないでしょうか。
「心の健康問題で休業した従業員の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省、2004年)などの資料を参考に、職場復帰の仕組みを作る会社も増えてきました。しかし「仕組みは作ったけれども、やはりメンタルヘルス不調者の支援は難しい」という声が多く聞かれています。今回はそうした会社のひとつ、A社の事例を見てみましょう。
A社の従業員数は500名。常勤の保健師が1名いて、産業医は近くの病院の先生と契約し、週3時間だけ来てもらっています。ただし、メンタルヘルスのことは専門外だと言うので、事例対応にはいつも苦労しています。
そこで「手引き」を参考に、職場復帰支援の仕組みを作ることにしました。まず、休業中も毎月、産業医面談を行うようにしました。復帰時には主治医に情報提供書を記入してもらい、職場判定委員会を開くなど、復職の手続きを定めました。さらに、リハビリ出社の制度も整え、段階的な職場復帰が実施できるようにしました。
しかし、この仕組みを導入した後も「十分回復していないのに復職可能の診断を持ってくる」「主治医の情報提供書の内容が会社のリハビリ出社の仕組みに合わない」「復帰後すぐに病状が悪化する」という事例が相次ぎ、人事担当者は頭を抱えています。
なぜA社では、この「職場復帰の仕組み」がうまく機能しなかったのでしょうか。
出社開始のタイミングをはかるためには、本人の回復状況を評価することが必要です。メンタルヘルス疾患には病状を示す血液検査などはなく、治療経過にも個人差があります。回復状況を把握するには、本人と面談をして、症状の程度や頻度、日常の生活リズムなどの情報を細かく聞き出すしかありません。
また、リハビリ出社を開始できるタイミングは、会社のルールによって異なります。なぜなら、1日の勤務時間や適用期間などが違うと、必要な体力が異なるためです。
さらに、職場の環境調整を適切に行うためには、本人の症状に関連する要因を把握することが重要となります。病状に関連する要因には個人差が大きく、本人自身がそれに気づいていないことすらあります。
こうした重要な情報を、すべて主治医の書類に求めることには限界があります。職場復帰を円滑に進めるには、事業所の産業保健スタッフが本人と継続して面談を行い、自ら情報収集することが必要となるのです。
ところが先ほどのA社では、週に3時間という制約があるためか、産業医面談はわずか15分足らず、通り一遍の質問しか行われていませんでした。そのため、産業医が本人の状況を詳しく把握することができず、結果的には主治医の診断書を追認するだけになってしまったのです。
つまり、いくら職場復帰支援の「仕組み」を作っても、メンタルヘルス事例に対応できる「専門家」がいない限り、その仕組みをうまく活用できないのです。
ここで言う「メンタルヘルス対応の専門家」とは、精神科医や臨床心理士などの職種に限定するものではありません。疾患の知識、事例対応の知識、本人との面談スキル、関係者からの情報収集スキルや調整スキルを持ち、事例対応の中心的役割を果たせる産業保健スタッフのことを指しています。
こうした専門家と新規に契約する、あるいは人材を育成する方法については、お近くの産業保健推進センター、健診機関、EAP機関、他社の担当者などに相談するとよいでしょう。
次回は「専門家を雇ったのに、事例対応がうまくいかない」という問題について考えていきます。
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【筆者略歴】
中外製薬 統括産業医 難波克行氏
99年岡山大医卒。内科医を経て産業医資格を取得し、05年岡山大学大学院博士課程修了。精密機器メーカー産業医を経て、08年から現職。 ブログ「ELECTRIC DOC.」 http://e-doc.no-ip.com/
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