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職場復帰支援(2)〜専門家だけでもうまくいかない〜 2008年7月15日号
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前回の記事では、メンタルヘルス事例に対応できるスタッフがいなかったため、職場復帰支援の仕組みがうまく機能しなかったA社の事例を紹介しました。今回は、メンタルヘルスの専門家と契約したものの、その能力をうまく活用できなかったB社の事例をみてみましょう。
B社も、A社と同じく500名規模の会社です。常勤の保健師が1名と、週に1回来社する産業医が1名いますが、メンタルヘルス事例への対応には苦労しています。
そこでB社はカウンセラー(臨床心理士)と契約し、週に1回来てもらうことにしました。契約にあたっては、カウンセリング室を新設し、相談記録を保管するキャビネットも用意するなど、万全のプライバシー対策を行いました。安心して利用できると評判もよく、利用者は少しずつ増えていきました。
そんなとき、Bさんがカウンセリング室を訪れました。Bさんは30代の男性社員で、不眠や気分の落ち込みに悩んでいました。臨床心理士はBさんに、しばらく残業を避け、精神科を受診するようアドバイスしました。
ところがBさんは、ときどき会社を休むようになりました。勤怠の変化に気づいた人事が上司に確認したところ、Bさんがカウンセリングを受けていることがわかりました。そこで人事担当者は健康管理室に問い合わせたのですが、相談内容について保健師は何も知らされておらず、状況はよくわかりませんでした。
まもなく「自宅療養が必要」という診断書が出され、Bさんは休業することになりました。休業中もBさんと臨床心理士の面談は続きましたが、相談記録は鍵のかかるキャビネットに保管され、保健師が見ることはできません。Bさんの様子をたずねても「クライアントとの守秘義務があるから」と臨床心理士は渋い顔をするばかりです。
3カ月後、Bさんは「1日2時間の短縮勤務なら出社可能」という主治医の診断書を持ってきました。臨床心理士もその内容を妥当と判断し、1日2時間からスタートする復職プランを立てました。
しかしB社では1日2時間の出社を認める制度はありません。臨床心理士は「段階的な職場復帰が何よりも重要なのに人事は何も理解していない」とご立腹ですし、人事は「コアタイムからの出社しか認められない」の一点張り。板挟みになった保健師は一人苦しい思いをするのでした。
このように、B社では、メンタルヘルスの専門家として臨床心理士と契約したわけですが、その専門性をまったく活用できていません。B社の最大の問題点は、臨床心理士と契約する際に、その役割を明確にしておかなかったことです。つまり臨床心理士が産業保健チームの一員として連携できる「仕組み」が必要だったのです。
まず重要なのは、情報共有の仕組み、つまり、情報のアクセス権を適切に設定することです。産業保健の現場では、産業医・保健師・臨床心理士が同じ面談記録にアクセスできる仕組みが適しています。その他、事務スタッフや衛生管理者などにも役割に応じたアクセス権を設定します。
次に、就業上の配慮に必要な情報を人事や現場に確実に届ける仕組みが必要です。保健師や臨床心理士が得た情報なども、産業医面談を通じて「産業医の意見書」を作成し、書面で人事に提出するようにします。
さらに、就業上の配慮を適切に行うためには、本人だけではなく上司や人事からも情報を得る仕組みが必要です。実際の現場では「面談の後に、上司も呼んでおきました」「人事も話をしたいそうです」と、ベテランの保健師や衛生管理者が気を利かせていることが多いようです。
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【筆者略歴】
中外製薬 統括産業医 難波克行氏
99年岡山大医卒。内科医を経て産業医資格を取得し、05年岡山大学大学院博士課程修了。精密機器メーカー産業医を経て、08年から現職。 ブログ「ELECTRIC DOC.」 http://e-doc.no-ip.com/
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