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注目集まる「組織公平性」   2008年8月25日号

   「メンタルヘルス不調者が出ない会社にしたい」「快適に、元気に仕事ができる職場にしたい」というのは、産業保健スタッフと人事労務担当者の共通の願いです。個別のメンタル事例の対応ができるようになってくると、次は予防に向けて手を打ちたいと考えるようになります。

   現在、多くの企業で「ストレス調査」を入り口とした予防対策が行われています。ストレスへの気づきや対処を促すセルフケアの効果が期待できますし、管理監督者に対しては部下や組織のメンタルヘルスに対する教育の機会にもなります。また、メンタルヘルス不調のリスクが高い社員の早期発見と早期対応にも役立ちます。

   さらに、こうしたストレス調査の結果を職場単位で集計し、従業員参加型の職場改善グループワークへと展開する活動が行われています。少人数でのグループワークを行うことで、実際に起きている問題への解決につなげられる上、従業員のメンタルヘルスにとって重要な「職場の相互支援(ソーシャルサポート)」を高めることができるのです。

   しかし、このような改善活動を計画しようとすると、「ただでさえ忙しいのに、そんな時間は無い」「そうした活動を押しつけられることで、さらにストレスが増えてしまう」という反対意見が出てくるものです。そのため、活動がなかなか進まないという声もよく聞きます。

   こうした意見をうまく調整して効果的に活動を進めるヒントを、最近のストレス研究の成果から探ってみましょう。従業員のメンタルヘルスの向上や職場改善の手がかりとして、「組織公平性」(組織的公正)という考え方に注目が集まっています。

    組織公平性とは「自分たちの職場がどれほど公平な組織だと感じているか」という尺度です。大きく分けると「意思決定のプロセスの公平性」と「意思決定者(上司)の部下に対する態度」の二つから成り立っています。

    意思決定のプロセス(手続き)の公平性というのは、意思決定によって影響を受ける人たちが、意思決定に先立って正確な情報を与えられ、考えを求められたり、意見を述べたりする機会を与えられているかどうか、意思決定は正確な情報に基づいているか、意思決定のルールは明確ですべての従業員に等しく適用されているか、ということに関連しています。

    意思決定者である上司の態度としては、例えば、意思決定に先立ってタイミングよく部下に情報を与えているかどうか、部下の意見に耳を傾けているか、独りよがりになっていないか、部下の立場や権利に理解を示しているか、部下に誠実で思いやりのある態度で接しているか、などが重視されます。

    すなわち、従業員は「組織の意思決定のプロセスが不透明で、自分たちの知らないところで決まったことを一方的に押しつけられている」と感じたとき、強くストレスを感じるのです。いくらメンタルヘルス対策とはいえ、知らないところで決められた活動を押しつけられることに、現場から反対意見が出るのももっともなことです。より効果的な活動を行うためには、こうした従業員の心の動きをよく理解し、丁寧に計画を進めることが必要です。

    ある事業所では、職場改善活動の推進にあたって「プロセスの公平性」を重視し、改善活動の企画段階から従業員の意見を聞くことにしました。説明会を繰り返し開いては活動の目的や意義を説き、活動の具体的な進め方についても従業員の意見を聞き入れるなどして、時間をかけて、改善に向けての共通認識を作りあげていきました。その結果、全員が積極的に参加する職場改善の取り組みを成功させることができたのです。

【筆者略歴】

中外製薬 統括産業医 難波克行氏

99年岡山大医卒。内科医を経て産業医資格を取得し、05年岡山大学大学院博士課程修了。精密機器メーカー産業医を経て、08年から現職。 ブログ「ELECTRIC DOC.」 http://e-doc.no-ip.com/

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