健全な情報社会をめざし
 情報化レビュー・電子版
 第117号

▲ 第117号 目次
▲ リレー随想
▲ 情報化推進国民会議活動報告
▲ 最先端IT国家への取り組み
▲ 中国IT事情
▲ 情報化推進懇話会
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IPTV革命
〜放送・ネット・モバイルのビジネスモデルが変わる〜
西 正 著
日経BP社  2,095円+税


   本書は、ようやく本格展開が始まろうとしているIPTVが、革命的に引き起こすであろう数々の利便性について紹介するとともに、その障害になりかねないハードルを乗り越えていくためのポイントをまとめたものである。IPTVとはIP(インターネットプロトコル)ネットワークを通して、テレビ番組や映画などの映像を配信するサービスである。「放送のデジタル化」、「放送と通信の連携」における目玉とも言えるサービスであり、新たな産業革命と呼んでもおかしくないインパクトがある。その最大のポイントとなったのが、2007年12月に成立した改正放送法である。まさにIPTV革命を起こす引き金とも言える。2008年に動き始める大きなポイントとして、次の3つが挙げられるという。
   第1がNOD(NHKオンデマンド)の始まりであり、NHKによる本格的なインターネット配信がスタートする。これまでは、ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)にVOD(ビデオ・オン・デマンド)用の単品のコンテンツを提供してきており、今後もそれは継続されるが、法改正によってNHKが自ら個別ユーザーに対して直接配信することが可能になったということである。先行してサービスを開始するNHKの動向を民法事業者も注視している。ユーザーからの強い支持があれば民放事業者としても取り組まざるを得なくなる。取り組む以上は収益事業化を目指すことになるため、広告収入だけとは限らない多様なビジネスモデルが模索されることになろう。
   第2が民放業者の本格的な再編の始まりである。放送法の改正によって実現したもう一つの目玉が、持ち株会社制度を認めるという「マスメディア集中排除原則の緩和」である。現在の系列ネットワークをベースにした形態はもちろんのこととして、ほかにも特定エリアごとに系列を超えて持ち株会社を設立し、その下にそのエリアの放送業者が並ぶことも考えられる。現在のネットワークは基本的にニュース協定をベースに形成されており、それを生かす形でエンタテイメント系の番組の全国ネットを実現している。民放事業者の再編といっても一様に進むとは限らず、様々な形態での合従連衡が起こることは十分にあり得ることになる。
   第3が地上デジタル放送のIP再送信のスタートである。VODと多チャンネルサービスを提供するIP放送はこれまでも提供されてきたが、CATVとの最大の違いは地上波放送が再送信されるかどうかにあった。2年にわたる実証実験が行われた結果として、あくまでも補完手段として地上デジタル放送の再送信が可能になり、2008年度中に東京と大阪からサービスが開始され、今後は全国的に展開していくことになる。
   放送事業者や通信事業者、端末メーカーなどの関連各社が、世界的な潮流として市場を拡大させつつあるIPTVサービスを、自らの新たな収益機会ととらえ、ユーザーの利便性を高めていくことに成功すれば、知的財産立国を目指すわが国にとって、その支柱ともいえそうな産業に発展していくことが期待される。
   本書は、本格的なIPTV時代の到来によって、通信と放送の融合時代がどのような姿になっていくのか、またメディア業界にどのような地殻変動が起こっていくのかについてのいくつかの方向性が述べられていると考える。是非一読をお勧めしたい一冊である。