健全な情報社会をめざし
 情報化レビュー・電子版
 第124号

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2020年の日本人
2020年の日本人
松谷 明彦 著
日本経済新聞出版社 1,800円+税

  前著「人口減少経済の新しい公式」では、人口減少社会がどのような姿なのかをデータに基づきしめすことに重点が置かれていたが、本書は本格的な人口減少社会に向けて今なすべきことを示すことに重点を置いた意欲作である。データに裏づけされた論理展開には非常に説得力がある。
  日本は2005年にすでに人口減少社会に突入している。筆者の予測によれば、労働力の縮小率が労働生産性の上昇率を追い越すことになるのは2010年である。言い換えれば、2010年代の前半には日本経済は縮小に転ずる。これまでの拡大から縮小へという経済の量的、質的な変化の下で、果たしてどのような経済社会が築かれるべきなのか。本書は人口減少社会における日本の進むべきいくつかの方向を示唆している。
  第1章では、今後は労働力が急速に縮小し、高齢労働力や外国人労働力によっても、結局のところそれをカバーすることは困難であり、いたずらにその活用を図ることは、逆にコストの上昇等による国際競争力の低下や、後世代への負担の移転といった重大な問題を引き起こすことになると述べられている。そして労働力の縮小によって、日本経済もまた縮小に向かわざるを得ないこと、その中で現在の企業運営や経済運営は基本的な転換が求められることになるが、それが結果として、日本人をむしろ豊かにすることになるという。
  第2章では、こうした日本経済の量的、質的な変化の中で、地域経済がどう変化していくのか、そして大都市がどう変化していくのかを述べている。
  第3章では、こうした地域経済や大都市におけるさまざまな変化の中で、これから日本人はどう生きていくのか、あるいはどんな生き方ができるのかをまとめている。そしてまた、その基盤条件となる今後の経済や年金、財政のあり方を考えるのがこの章のもう一つの目的になっている。
  人々の生活という視点から見た日本経済の変化を概観すると、筆者の推計によれば、2020年の一人当たり実質国民所得は299万円であり、2005年の304万円に比べてわずか1.6%低下するにすぎない。15年間で1.6%の低下だから、ほぼ横ばいに近い。国民所得とは、企業も含めた日本経済としての1年間の所得、すなわち日本人が1年間に利用できる経済資源の量である。したがって、日本経済の規模は縮小するが、日本人一人ひとりから見れば、その経済的な豊かさは現在とほぼ変わらないということである。
  加えて、現在の日本の一人当たり国民所得が世界でトップクラスの水準にあることを考えれば、2020年においても世界でトップクラスの豊かな国であるという点も変わらないと筆者は推計している。ちなみに推計における労働生産性(国民所得ベース)の上昇率は2005年から2020年の15年間で14.1%であり、賃金の上昇率は15年間で11.6%である。また、高齢化によって今後は日本人の中で働く人の比率が低下する。2005年における全人口に対する労働力率は52.0%であったが、2020年には49.5%まで低下すると予測している。
  本書には、2020年に向けて日本が経済社会システムをどのように転換していくべきなのか、地域経済はどう変わっていくべきなのか、都市はどう変わっていくべきなのかを考える上でのデータに裏づけられたヒントが描かれていると考える。是非お勧めしたい一冊である。