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 情報化レビュー・電子版
 第200号

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インドIT事情 第30回
 
『iPhone5、インドでも異例の大人気』

    世界中に旋風を巻き起こしているアップルの「iPhone5」が、11月2日にインドでも発売された。とある情報筋によると、10,000~15,000台ほど出荷されたとされる第一便はすでに完売、第二便の予約もいっぱいになっているという。アップルは明言をしていないものの、12月末までに20万台のiPhone5がインドで販売されるだろうと、業界の動向に詳しい関係者は予測している。

    これまでインドに最新版のiPhoneが入ってくるのはいつも米国や日本での発売の少なくとも数カ月遅れだったことや、数千ルピー(10,000円以内)で購入でき、そこそこの機能が備わるアンドロイド端末が広く流通しているのに比して、端末価格が45,000ルピー(およそ67,000円)以上と、インドの物価水準からするとあまりにも高額過ぎる価格を敬遠する空気が主流だったことを考えると、今回はiPhoneに対するまなざしが通常より異例に熱いようだ。実際、今年4月から6月までにインド向けに出荷されたiPhoneの台数は50,000台にも満たなかった。インド国内でiPhoneを販売するモバイル通信事業者エアセル(Aircel)によれば、11月上旬現在、同社に寄せられているiPhone5の予約注文数は、iPhone4Sの発売時を78%凌いでいると発表している。

    いずれのiPhoneもインド国内での価格はほぼ同じで、なぜ今回だけはこれほどの歓迎を受けているのか、関係者は分析を急いでいる。ある業界関係の情報筋によれば、これまでアップルは他国と同様、インドでもiPhone販売をモバイル事業者に頼ってきたが、これが消費者の需要を明確に捉えきれない「非効率」の根源となっており、業績が伸びにくかった。なぜなら、通信料自体が格安なインドにおいては、モバイル事業者が月額の通信料に端末代金を上乗せして消費者に課金することにより、端末の売上台数をブーストする(引き上げる)というモデルが成立しないためである。結果としてモバイル事業者は単なる代理店に過ぎなくなっている。

    そこで今回からは、アップルは「専門の」代理店としてレディントン(Redington)社およびイングラム・マイクロ(Ingram Micro)社と契約し、SIMロック解除版も含めた端末自体の直接販売にシフトし、年々急速に変化する消費者の需要パターンに迅速に対応することを狙っている。これにより、インドはまさに遅れてやってきた「iPhoneの春」を迎えていると言える。

    また先月末にやはりセンセーショナルに発表された「iPad mini」も、公式発売先の筆頭国からこそ漏れていたものの、やや遅れてオンラインショッピングポータル「Tradus(http://www.tradus.com/)」が今月5日より先行予約受付を始めた。価格はiPhoneよりも安い26,990ルピー(16GBモデル)から43,490ルピー(64GBモデル)となっており、筆者のように財布の中身に限界のあるアップル製品ファンは、むしろこちらを選ぶのではないかと考えている。

 
<寄稿者のプロフィール>
デシュムク 陽子(でしゅむく・ようこ)氏
福岡県出身。2003年末よりインドのマハーラシュトラ州プネに移住。以来、インド情報を紹介するポータルサイト 「ASKSiddhi」 を運営。現地の日系ソフトウェア会社に勤務し、翻訳や通訳、テクニカルライティング業務などを担当するかたわら、2009年よりフリーランスとして、インド人の夫が立ち上げたIT会社「審美コンピューティングラボラトリーズ」 と協業。翻訳業務をきめ細やかなサービスで提供するとともに、海外進出をめざす日本の中小企業の支援をしながら、国籍を問わぬ優秀な人や技術者が適所で活躍できる場を
                                        作ることを目指して活動している。