健全な情報社会をめざして
 情報化レビュー・電子版
 第200号

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IT社会展望

第31回『東日本大震災の教訓を生かした災害に強い情報システム』


   昨今、地震などの自然災害に加え、インフルエンザなどのパンデミック、蔓延するコンピュータウィルスや多発するサイバー攻撃、コンプライアンス、製品やサービスの品質問題など、企業経営を取り巻くリスクは多種多様です。特に、2011 年に発生した東日本大震災やタイの洪水は、自動車や機械、電機などの製造業にサプライチェーンの寸断をもたらし、大きな減益要因になりました。これらのリスクによる企業経営への影響を局所化・最小化し、事業を中断させない、あるいは中断した事業を目標時間内に復旧させるための“備え”として、BCP(Business Continuity Plan)が改めて認識されています。

過去の知見・ノウハウを集約し、東日本大震災に対応

   三菱電機では東日本大震災以前から、BCPの策定にあたり、企業に求められる社会的責任を果たすため、@人の安全確保 A社会機能の維持にかかわる事業の継続 B自社の経済的被害の極小化 を活動のベースとして位置付け、災害や事故が発生した際に企業全体として取り組むべき優先順位を決定しました。

   東日本大震災発生後も、この取組に基づき、まず従業員の安否確認を最優先に行うとともに、Aの取組に基づき、関係企業やユーザ企業の支援を推進していきました。その1 例が、被災した薬局の調剤業務の復興支援です。三菱電機では、震災後20 日目には、単なるソフトウェアの提供ではなく、薬局向けソフトウェアと調剤データベース、パソコン、プリンタをセットにして、無償提供を開始しました。調剤薬局の被災は人命に関わる事態であり、早期の復旧支援が不可欠でした。

新たな課題にも対応した情報システム災害対策ソリューションを提供

   東日本大震災では、「想定外」という表現が頻繁に使われたように、原子力発電所の停止に伴う計画停電や交通機関の停止により従業員が出社できないなど、不測の事態が数多く発生しました。三菱電機では、こうした新たな課題を認識しながらBCP の見直しを実施し、対策の強化と全社的な取り組みを徹底して推進しました。

   その1つとして、地震や津波といった災害そのものではなく、被害が想定される建物や人、情報システムといったリソースベースで検討項目や必要な対策を明確化しました。「震度6」や「震度7」といった事象に着目して議論してしまうと、例えば地震以外の新たな脅威が発生した際に、「想定外」という表現を用いる余地が残されてしまいます。そこでどのような災害が起きるかではなく、どこの建物が損壊したとか、どの情報システムが停止した、どこの部署が出勤困難になったなど、リソースベースでシナリオを想定し、対策をとりました。

   三菱電機では、震災の教訓を生かしたリソースベースの考え方に基づき、情報システム災害対策ソリューションとして、情報システム災害対策コンサルティング、サーバの統合・仮想化、遠隔地にあるデータセンターを活用したデータ保管などを提案しています。

   データ保管は、すでに多くの企業で構築・運用していますが、サーバ自体が損壊するケースも多かった東日本大震災では、新たな課題が顕在化しました。それは、それまで稼働していたサーバ上のソフトウェアが、現在、購入することが出来ない旧版を使用している場合です。サーバ自体が破壊したため、新たに購入したサーバで、今まで使っていた旧版のソフトウェアが動作しないことがおきました。これでは、せっかく保管しておいたデータを元に戻すことができません。

   そこで、サーバの仮想化という技術を使い、新しいサーバでも動く環境を事前に作成し、遠隔地にあるデータセンターに保存しておくことにより、リカバリ用に準備した災害対策用サーバと組合せ、サーバ自体が破損した場合の迅速な復旧を可能にしました。

情報システム災害対策を 「攻め」 の施策に

   もちろんBCPは、企業理念や事業内容、事業環境、取引先との関係などに基づいて、各企業が独自に考えるものです。情報システム部門には、自社独自の全社的なBCP に基づく情報システムのBCP 策定が求められます。これは言い換えれば、自社情報システムのあるべき姿を明確にすることにほかなりません。三菱電機では、情報システムのあるべき姿も含め、企業に応じた最適解の追求を重視しながら、「攻め」の施策として、BCP 策定、情報システム災害対策を支援していきます。


図 仮想化とデータセンター活用による情報システム災害対策



  <著者プロフィール>
  草場 信夫 氏
  三菱電機株式会社インフォメーションシステム事業推進本部
  情報システム推進部 連携事業推進センター
  第四グループマネージャ

三菱電機株式会社、三菱電機インフォメーションテクノロジー株式会社(MDIT)にて、汎用機の基本S/W開発、データウェアハウス(DWH)/データ統合など全社データ基盤に関するシステムデザイン、システム構築に従事。 現在は、三菱電機自身の災害対策の経験、ノウハウを生かした、お客様企業向けのBCP策定や情報システム災害対策の支援を実施。 技術士(情報工学部門)、
PMP(Project Management Professional)。