健全な情報社会をめざして
 情報化レビュー・電子版
 第200号

▲ 第200号 目次
▲ IT社会展望
▲ IT業界動向
▲ 海外IT事情
◆ 今 これを読め
▼ トピックス
▼ご意見、ご感想はこちらまでお寄せ下さい
今 これを読め

『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』
クリス・アンダーソン 著
   NHK出版   1,900円+税 


    ウェブ上に転がる数々の無料ビジネスのモデルを紹介したベストセラー『フリー』から3年。著者のクリス・アンダーセンの新作が本書『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』である。
   彼の唱える21世紀の産業革命とは、いわゆる「デジタル革命」だ。なぜいまごろ「デジタル革命」なのだろう?と誰もが首をひねるだろう。アンダーソンは次のように断言する:コンピュータが、本当の意味で僕らの文化を変え始めたのは、それがネットワーク(インターネット)につながった時だった。しかし、「究極の経済的インパクトが感じられるようになるのは」、実体経済に波及した時、つまり、ものづくりの世界が変わったときである、と。そして、ものづくりの世界は現在進行形でデジタル革命を受け変わりつつあるという。この動きを彼は「メイカームーブメント」と呼び、本書でその内実をレポートしている。

   メイカームーブメントの主体は個人と個人を基盤にしたコミュニティだ。彼もしくは彼らはウェブ上にアイデアを開陳し、仲間を募り、資金集めもオンラインで行って(キックスターターという、個人の集合体からなるプロジェクト単位でお金を集める方法による)、自らデザインし製造し、(オンライン上で)販売して儲けることが出来る。この手のメイカーはかなりの程度趣味の延長でこだわりをもって製品化しようとする人が多いので、熱心に製品化に取り組むし、同好の士は世界中からオンライン経由で集まってくるため、開発のスピードも速い。
   こうしたメイカームーブメントのもうひとつのキーは「オープン化」である。これを支援するのがグローバルなサプライチェーンの登場だ。材料の調達、部品の製造、組み立てはこれまで企業に独占されてきたが、現在(及び今後10年の間)では、ポノコやシェイプウェイズなどのウェブ製造委託サービスによって、個人が大企業と同じ製造能力を手に入れることが出来るようになったのである。これまで「オンライン上で自ら製造して販売できるもの」といえば、玩具だとかマグカップだとかの手芸品に限られていたが、いまや、複雑な製造品―たとえば、自動車―でもオンライン上で設計から販売まで一貫してこなすことが出来る。必要なソフトウェア・サービスをすべてインターネット上で調達し加工・保存するのがクラウドであるが、これからはモノづくりでさえもクラウド化するのである。

   面白いことに、アンダーソン自身もメイカーズに加わっている。彼はレゴやヘリコプターの模型を作り、コミュニティを組織して、世界中の友人とのコラボレーションの中で自らの作品を開発・販売している。事実、本書の最後には、付録としてメイカーとなるための様々な電子機器やロボット装置の解説がついている。本書は「あなたもメイカーズになれる」手引き書でもあるのだ。

   家電メーカーの不振が続く中、メディアでは、「ものづくり再生のカギは?」、「日本ブランドは復活するか?」といった議論が盛んだ。著者の提示する製造業の将来像は、世界中から部品を調達、デザインから製造、販売まですべてオンライン上で行い、自らのこだわりに大変な熱意を持って取り組む職人気質のコミュニティ(メイカーズ)なのだ。こういう組織(メイカーズ)に勝てるのか?という視点から、日本の製造業の競争力について考えてみることも、今後必要になるのではないかと思われる。