第6回:東京センチュリー(2019年11月15日号)

■キャリアを自分でデザイン

東京センチュリー(本社=東京・千代田区神田練塀町)は、従業員一人一人が生きがいをもって働き、成長することが企業の成長につながるという考えのもと、キャリア開発支援に積極的に取り組んでいる。入社3年目、入社10年目、40歳、50歳の節目で「キャリアデザイン研修」を開催しているほか、今年4月には「キャリアデザイン室」を人事部内に設置し、従業員の幅広い相談に対応している。

同社は、大手有力企業を大株主に持つ金融・サービス企業として、リースにとどまらず、企業のあらゆるニーズに対し、総合的なファイナンスサービスを提供している。 

キャリア開発支援の背景について、野村吉夫・東京センチュリー常務執行役員は、「従業員には、自らのキャリアをしっかりと描き、それに向かって頑張ってもらいたいと考えており、企業として、そういった意識を持った従業員をしっかりとサポートしていきたい。企業の成長のためには従業員の成長が必須であるとの認識をしっかり持つとともに、従業員が成長を実感できる魅力ある企業であるための努力を欠かさずに行うことが必要だ」と語る。 

5年前から実施しているキャリアデザイン研修では、どの層においても、いかに自らが主体的にキャリア形成をしていくかに主眼を置いている。 

例えば、40歳を対象とする研修では、①キャリア形成の拠り所となる「価値観」「強み」を明確にする、②組織の中心的な人材として活躍するための土台となる「人間力」を向上させるヒントを得る、③これからを展望し、キャリアの軸となる「キャリアビジョン」「使命」「信念」「行動」を明確にする、の三つがねらいとなっている。 

キャリアデザイン室では、自身の働き方を振り返り、強み、弱み、価値観を把握していくなかで、目指したい姿を明確にしていけるように支援しており、今年からは、キャリアデザイン研修の終了後に、キャリアデザイン室のメンバーが研修受講者と面談し、今後のキャリアプランの擦り合わせを行う「キャリアデザイン面談」を実施している。 

キャリアに関する相談ができるようキャリアデザイン相談窓口も設置している。キャリアデザイン室のメンバーとの面談だけではなく、希望者は日本生産性本部のキャリアコンサルタントとも面談ができる体制を整備した。 

その他、55歳を対象とするライフデザイン研修では、公的年金制度の内容を確認しつつ、定年後のライフプランの検討や、会社の企業年金や介護支援制度の説明などを行っている。 また、従業員一人一人が自身の特性(強みや課題)を把握し、今後のキャリア開発につなげていくことを目的として、全従業員対象の「個人特性分析」を今年5月に実施した。 

自身のパーソナリティの特徴や将来開発すべき能力を客観的に把握したうえで、キャリアの最大の支援者である上司が部下の個人特性を把握し、特性分析を踏まえたコミュニケーションを行うことによって、的確に指導や助言をできるようにしている。同時に、外部研修を自由に選べる選択型研修を今年度から導入し、自らが伸ばしたい能力やスキルに関連した講座を受講できるようにした。プレゼンテーションやロジカルシンキング、統計分析など、幅広い講座を設けている。 

上司と部下が部下の行動特性を理解したうえで、伸ばしていきたい能力やスキルなどを話し合うキャリア面談も定期的に行うことにした。 

今年2月には従業員意識調査を実施した。意識調査の結果については、経営会議・取締役会への報告などを行っており、改善に向けた施策の検討・実施を進めている。

■施策の浸透・定着図る

(野村吉夫・東京センチュリー常務執行役員の話)

当社の業務は、メーカーのように独自の製品を開発・製造して売るといったことではない。取引先の置かれた状況を踏まえて、痛いところ、かゆいところに手を伸ばし、お手伝いする、当社の培ってきたノウハウを活かせる新しい分野へ進出する、アンテナを高くし世の中の変化を先取りして事業を展開していく、といったことに取り組んでいく必要がある。そうした仕事は、いろいろと知恵を働かせ、アイデアを考え、そして、取引先やパートナーの懐に飛びこんでいくことができる人がいてこそできることであり、まさに人が財産だ。

働く人の考え方、企業と従業員の関係も大きく変化してきている。最近の傾向として、従業員は、単に高いポストや処遇を望むのではなく、どういったキャリアを歩みたいか、どういった仕事をしたいかを意識し、それが属している企業で実現できるかを考えている。企業も、単に指示に従って頑張っている従業員を評価し、処遇するということではなくなってきている。 

部店長クラスと若い従業員とでは、キャリアに関する考え方が異なっている。部店長クラスがこれまで培ってきたマネジメントスタイルを否定するものではないが、今年から実施している個人特性分析などを通じて従業員同士のコミュニケーションを強化することが重要だと考えている。 昨年から今年にかけて様々な施策を実施しているので、今後は、それらの施策の浸透・定着を図っていきたい。キャリア開発支援は東京センチュリーの従業員が対象だが、今後はグループ企業の従業員のことも考えていかないといけない。目指したい姿に近づくことができないと考え、転職に至る従業員が少なからずおり、有為な人材の流出は企業にとっての損失になる。未然防止に向けた動きも重要な課題であり、所属部署でのきめ細かいコミュニケーションに加え、キャリアデザイン室での支援を強化したい。 

■「他責」ではキャリアは変わらない

(栗林裕也・日本生産性本部人材開発コンサルタントの話)

キャリアデザイン研修は演習や個人ワーク、グループワークが中心になる。キャリアを充実させるには自分と向き合って自分で答えを求めていくしかないからだ。 

研修では、自分のキャリアを人任せにせず、「自分事」として考えてもらうことを意識している。その対極にあるのが「他責」の考え方だ。組織が悪いから、上司が悪いからと言っていては、他者が変わらない限り、自分のキャリアは変わらない。 

日々の仕事に埋没していると虫の目のように単視眼的になりがちだが、研修を通して、日々の仕事から少し離れ、鳥の目のように中長期を俯瞰して、自分がどういう道を歩んでいきたいのか、そのためにこれからできることは何かを考えてほしいと伝えている。 

人材が企業の競争力の源泉だとすると、しっかりとしたビジョンや目的意識を持って、夢中になって仕事に取り組んでいるメンバーが揃っている会社は当然強い。その内発的な動機づけは、会社が決めるものではなく、本人の心が決めるものなので、研修では自分の中の感情や心に向き合うことを重視している。 

企業人は、年代によって、置かれている状況や期待される内容が変わるが、それらを先読みしていくことが重要だ。状況が変わってから何かを行うのではなく、将来がある程度わかっているのであれば、事前に考えて準備しようというのがキャリア開発の考え方だ。自分が5年後、10年後にどう変わるのか、どうしたいのか、そのために今から準備できることは何か、をじっくり考えて、徐々に行動に移していくことがそのスタートになる。

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