第3回 基準は経営がよくなること

■基準は経営がよくなること

拠り所の変遷

大学卒業後、卸小売業、製造業、建設業を約15年間経験後、日本生産性本部の経営コンサルタント養成講座を経て経営コンサルタント業務に約25年間従事。この仕事を25年間続けてこられたことからも、概ねうまくやってこられたのではないかと思う。

30代までは理論に執心し、最先端の理論や欧米の理論を学びわが物顔で仕事をしていた記憶があるが、そのうち二つの問題にぶつかる。一つ目は自分の考えの喪失。二つ目は理論の具体化の難しさと変化の速さ。

このようなことから30代後半からは自分の考えを大事にするに至った。そして養成講座時代に自分の拠り所は「経営」であることに気づかされた。経営理論は理解していたつもりであったが、当事者意識が欠落していたため「自分事」にはなっていなかった。


基本スタンス

経営コンサルタントの仕事は大きくコンサルティングと教育の二本柱であるが、遂行にあたっての価値判断基準は「経営=会社がよくなること」に据えることを肝に銘じている。どのような依頼内容であっても、「それで会社はよくなるのか」である。肩書に「経営」を名乗っていれば当然である。しかしながら、さまざまな案件対応において、経営者ニーズ、株主ニーズ、従業員ニーズなどさまざまな利害関係者ニーズと「会社が良くなること」との不整合に悩むことになる。良かれと思ってやったことでも、結果的には従業員をだまし討ちするようになってしまったことは少なくない。

こうしたことから、絶対解が無い中で、多様な選択肢の中から選択、決断を求められた時に「誰の判断」に従うべきかという局面が重要なカギを握る。私のスタンスは「最終的に責任をとる人」の判断に従うものとしている(あくまでも社会正義に反しない限りである)。


自分の領域にこだわらない

ビジネスの世界では差別競争優位性を築くことが重要とされるが、経営コンサルティングにおいては留意が必要である。自分の得意技や専門領域を持つことは否定しないが、経営を俯瞰する能力が欠落していると顧客ニーズの誤りに気付かないばかりか、顧客ニーズにかかわらず自分の得意領域に持ち込もうとする愚を犯してしまうことになる。経営コンサルタントと名乗るからには「ゴール」「重要経営課題」の認識とそのつながり(重要度、優先順位、関係性など)を整理することが大切であり、場合によっては顧客との対峙や仕事を断ることも必要である。

そういった意味では常に広範なスタンスで構えることが重要であり、実際の解決提供サービスに知見がなくても知見があるネットワークを構築できていれば連携・紹介などの展開ができる。自分の領域に引き込むことにこだわらず、会社がよくなることにこだわることが肝要と考えている。


得意技の磨き

真新しいコンテンツやスローガン、権威に弱い顧客層も一定数存在する。コンテンツの差別化は時間とともに陳腐化するため、コンテンツ開発の継続が必要となる。コンテンツ開発は実証期間も含めるとコンサルタント生活の中で割ける時間は少なく、その部分は研究者に委ねないと、肝心のコンサルティング稼働そのものが少なくなる。そうするとコンテンツのエッジではないエッジが重要となる。このような意味でも自分でやることに固執せず、多様な機関・人材との連携・協働が重要だと考える。テーマに対して最善を思考し尽くすことである。


最後に

経営コンサルタントとしての25年間においては、初期段階は「自分のため」が中心であり、そのうち自分がよくなるためには相手がよくならなければならないと考えるようになり、60歳を過ぎた今では、真の意味での相手がよくなるということをようやく考えるようになった。相手とは国であり、国民であり、会社であり、従業員のことである。

コンサルタント紹介

主席経営コンサルタント

中間 弘和

九州大学 経済学部 経済工学科卒業後、卸小売業、メーカー、建設業における経理・人事・情報システム部門を通して、主に下記業務に従事。

資金管理及び財務管理の情報化
人事管理全般の運用業務、人事諸制度設計、人事管理の情報化
情報システム企画

その後、「(財)社会経済生産性本部 経営コンサルタント養成講座」を経て、本部経営コンサルタントとして各種事業体の診断指導・教育にあたる。
(1960年生)

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