第10回 自分の得意領域に誘導しない

■経営コンサルタントになった経緯

私は前職の銀行員生活20年のうち7年以上もM&A業務に携わっており、企業の経営戦略に深く関与することが多かったことから、第2の人生として経営コンサルタントを意識していた。日本生産性本部の経営コンサルタントになった経緯は、銀行で担当していた企業の再建を日本生産性本部の経営コンサルタントに手助けしてもらった縁で、16年前にお世話になることとなった。採用試験で当時の部長は私の採用を反対したらしいが、課長がそれを押し切って採用したという話を後に部長から聞いた。

43歳という年齢と営業部長をしていた私が、経営コンサルティングの現場で自ら動けるものかという理由であったという。

■経営コンサルティングの領域

私の経営コンサルティングの領域は、経営診断から中期経営計画の策定ならびに実行支援が多く、現場レベルでは部門別採算管理制度などの管理会計の領域や営業力強化の支援などである。お客様の多くは中堅中小企業である。

もう一つの領域は人材育成である。管理者のマネジメント研修や財務・管理会計の研修である。こちらは大企業のお客様からの依頼が比較的多い。

経営コンサルタントになりたての頃に先輩から言われたことがある。「何でもかんでも自分の得意領域に誘導するな」であった。「自分の得意領域に誘導する」とは、お客様の課題が他にあるにも関わらず、自分の得意領域に課題があるといって、その課題解決を押し付けてしまうことである。私は最初のヒアリングや診断で、できないと判断したことは断るか、当該部分を他の経営コンサルタントに協力を仰ぐようにしている。いくら案件が欲しくても、無理はしない。

前述と少し矛盾するかもしれないが、領域の拡大は必要である。経営コンサルタントも成長しないと陳腐化するばかりである。新しいことへのチャレンジは必要であるが、お客様を実験台にすることは絶対にしたくない。お客様としっかりコミュニケーションをとりながら、伴走して課題解決を行っていく過程で自分の経験値を高めるのである。

■経営コンサルティングの方針

① お客様を愛すること 「愛する」とは大げさかもしれないが。経営コンサルティングをしていると変革の抵抗勢力もある。心無い言葉をかけられたこともある。そのような場合、私は部屋に入る前に心の中でこう唱える、「自分は〇〇さんが好きだ」。

② 経営コンサルタントの要らない会社を目指す 私はよくお客様に、「経営コンサルタントが要らない企業になりましょう」と言うことがある。中期経営計画や改善計画の実行支援の初期の段階では、私がやらないといけない状態もある。つまりやって見せる段階である。しかしいずれは自社でできるようになるまでレベルアップしてもらわなければ経営コンサルタントの価値がない。それは早ければ早いほどよい。そのためにも人材の育成は常に意識している。特に管理者のマネジメント能力アップは重要な成功要因であると考えている。

③ 数字にこだわる 「ストーリーの無い数字は無意味であり、数字の無いストーリーも無意味である」と言われる通り、結果であり目標ともなる「数字」にはこだわりたい。

■大切にしていること

私が大切にしている言葉は「志」である。私の「志」とは、日本一の中小企業経営のお役立ちになること。社長から「ありがとう」の言葉をいただくこと。これが私にとって最大の報酬である。

コンサルタント紹介

主席経営コンサルタント

檜作 昌史

神戸大学法学部卒業後、旧都市銀行に入社。M&Aアドバイザリー業務や法人向けソリューション営業部門の責任者として従事。
日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了、本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。
(1963年生)

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