第15回 日本の経営者に向き合う経営コンサルタント


私は30歳の時に日本生産性本部に入り、今年還暦の60歳を迎えた。節目の年の今回の寄稿を通し、過去30年を振り返りながら経営コンサルタントの在り方を考えてみたい。

■30代 顧客が納得する成果への献身的努力

前職でMBAに派遣された経験が経営コンサルタントになること、そして米国発信の経営に違和感を覚え日本的経営に興味を持つキッカケとなった。

目まぐるしい最初の10年は、企業再生と人事制度の案件が中心であった。再生案件では、経常黒字転換・債務超過解消などを目標とした実行可能な中期計画の作成、人事制度では、経営の方向性を踏まえた現状の課題解決に資する制度の設計導入が成果である。

10年を終える頃には、顧客の納得する成果を何とか実現できると思えるようになった。同時に、徹夜してでもやり遂げる献身的努力が必要であることを学んだ。


■40代 経営者から信頼される経営コンサルタント

約10年間で10テーマ前後の異なる案件に次々と取り組んだ顧客も3社あり、多様な経験を通して経営全般へと案件領域が広がった。

経営コンサルタントは「経営」のコンサルタントである。経営者は経営の全ての最終責任者であり、経営者に向き合う経営コンサルタントであるためには、経営の全ての領域をサポートする必要がある。よって、経営コンサルタントには、実践の場での学びを繰り返すことによるノウハウの蓄積=多くの引き出しを持つことが求められると確信した。

また、経営者からの信頼が無ければ、多様な経営課題の解決を頼まれることもない。信頼を得るためには、経営者と同じ風景を観て、最終意思決定者である立場を理解し、経営者が共感できる相手でなくてはならないと実感した。


■50代 経営者固有の課題へのサポート

この時点で20年の実践経験を活かして日本的経営を考察しようと試み、51歳の時に博士論文をまとめたが、何か残されているものが沢山あるような気がする。まだまだ足りない。 

50代を通して、経営者が気付かない視点からの課題や解決策の提案、方向性の示唆や意思決定の提示を心掛けてきた。今後共、多様な視点から経営を俯瞰し、意思決定が影響を及ぼす領域を幅広く見渡すとともに、より長い時間軸で経営の行く先を見通す努力を続け、経営者固有の課題へのサポート役を目指していきたい。


■「日本企業」の経営コンサルタントとして

日本の生産性向上のためには、ゾンビ企業の退出を進め起業を促進し、企業の新陳代謝を高めることが必要だとする考え方がある。この背景には、企業の目的は利潤の最大化にあり、そのためには徹底的な競争で他社を撤退させる完全競争市場の原理や、企業をモノや商品のごとく捉える価値観があるように思う。

日本企業の多くを占めるオーナー中小企業の究極の目的は、利潤最大化よりは世代を超えた長期存続にある場合が多い。また、競争しながらも一方で協調し、切磋琢磨しながら共に成長して業界を盛り上げようとする行動も見られる。日本人の意識の古層から蓄積された価値観が、資本主義の市場原理と融合し日本的経営を形成しているのかもしれない。

日本の生産性向上には、低生産性企業の退出を促すのではなく、個別企業の生産性向上を追求することが本筋と信じる。生産性向上に資する経営コンサルティングを実施し、人財と組織力の継続強化による生産性向上の持続的実現=「人財による循環経営モデル」(図参照)の経営へと強力にサポートしていきたい。

「人材による循環経営モデル」

コンサルタント紹介

主席経営コンサルタント

加納 良一

慶応義塾大学 経済学部卒業、慶応義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了 経営学修士
素材メーカーにて、新規事業の企画・マーケティングなどに従事。
日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了、本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、人材育成の任にあたる。
(1963年生)

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