第16回 論ずるな物語を語れ
ここでは、元々話し下手だった経営コンサルタントが、エンターテインメント(エンタメ)やコーチングの技術を使って、だれよりもリピートされる講師になった努力の物語を伝えたい。

~ライブメソッド5つの公式
生産性出版から『人前で話す教える技術』を出したのが、2017年。日本生産性本部で経営コンサルタントになったのが1989年なので、ここまで約30年かかっている。
もともと理工学部出身の私は、「経営コンサルタントは調査分析する仕事だろう」というくらいの漠然としたイメージで門を叩いた。これが大きな間違いだった。
経営コンサルタントは人前で話さなければならない。それも、分析結果を理路幣然とわかりやすく、かっ、クライアントが行動を起こしたくなるような心を動かすプレゼンテーションが必要だ。
そうでなければ、提案はただの絵に描いた餅になってしまう。それがわかるまでに3年かかった。「なんでこの提案が社内で受け入れられないのだろう」
もんもんとしながら、日々、提案内容を高めるための努力をしていた。
そして、一定レベルの内容が提案できるようになっても、それでもまだ、クライアントはレポートを机の引き出しにしまってしまうことが多かった。
提案内容でなく、伝え方や巻き込み方が重要だ。そのことはうすうすわかっていた。しかし自分が苦手な分野だったため、「内容さえよければ、クライアントのお役に立てる」という盲信から逃れることが怖かった。
しかし、そうとばかり言っていられない出来事が起きた。
それは、経営者を集めたセミナーを開催していたときだ。
「申し訳ないが、あなたの話は聞いていられない」はじまって15分くらいだったと思う。一番前の席で熱心に聞いてくれていた社長が、手を上げていきなりこう言ったのだ。社長は荷物を整理してそそくさとその場を立ち去った。
私は、頭が真っ白になった。情景は鮮明に憶えているが、その後のことは記憶がない。内容はしっかり準備した。スライドも沢山用意した。しかし、この結果だった。今思えば、どうしてダメだったのかはハッキリわかる。
「そんな内容だったら、本を読んだ方が早い」のだ。
つかみもなかった。期待感も与えられなかった。ましてや、感動とはほど遠いレベルだった。
思い起こせば、最初の10年は専門領域の質を高めることだけに力を入れていた。経営戦略、ビジネスモデル、組織開発、経営品廣…どれも璽要な内容だ。今もその知見の上に自分の経営コンサルティングがある。しかし、あまりにも「巻き込む」ための技術や心構えを軽視していた。
その後の10年、エンタメ(ストーリーテリング、ゲーム、マジックなど)を学び、コーチングやファシリテーションの技術を磨くことに没頭した。今思うと、故エドガー・H・シャイン先生のいうところのプロセス・コンサルテーション」と重なる部分が多い。無料メルマガを、自身の発信力強化のために毎日配信しはじめたのもこの頃だ。
2015年、長年の反省をふまえ後輩コンサルタントや講師仲間とともに勉強会をはじめた。それが「ライブ講師Ⓡ実践会」だ。私が30年かけて学んだ事をせめて3年くらいでつかんで欲しい。そんな願いではじめたライフワークだ。
勉強会も今年10年目を迎え、それは「ライブメソッドⓇ」という形で整理できるようになった。
「ライブメソッドⓇ」は九つのモジュールからなっているので興味ある方は検索して欲しい。経営コンサルタントとして、研修講師としてリピートされるためのノウハウがまとめてある。
しかし、ここではその内容には触れない。なぜなら30年かけていきついたのが次の考え方だったからだ。
「論ずるな、物語を語れ」経営コンサルタントは、つい、論(提案内容)をふりまわしたくなる。しかし、読み手が期待しているのは「物語」だ。「ライブメソッドⓇ」も、あなたが興味をもってもらえたら検索してくれるはずだ。
そして、この考え方をこの文章自体が体現しているとしたら、こんなに喜ばしいことはない。
コンサルタント紹介

寺沢 俊哉
慶応義塾大学理工学部管理工学科卒業後、株式会社パルコにて、新規事業開発・マーケティング等に従事
日本生産性本部経営コンサルタント養成講座を修了、本部経営コンサルタントとして、各種事業体の診断指導、リーダーシップ、エグゼクティブコーチング、モチベーションアップなどのテーマで人材育成の任にあたる。
(1961年生)
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