DX人材育成の課題と最新事例を解説
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日本のDXはなぜうまくいかないのか?
なぜ95%ものDXが失敗してしまうのか?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何でしょうか。「デジタル技術を使って、事業や会社のあり方を変革する」ことですが、こうしたプロジェクトのほとんどが失敗しています。国内外を問わず、さまざまな調査結果が発表されていますが、どれもこれも成功率は10%程度。経済産業省の調査に至っては5%となっており、20件に1件しか成功していません。
DXは特定の業種で求められていることではなく、全ての産業で行わなければならないことです。「企業が大きく成長するために、DXは必須である」。多くの経営者がこの考えに、きっと賛同してくれるでしょう。それでもなお5%しか成功していないというのは、大きな問題といえそうです。
それではなぜDXが失敗するのか、その原因を考えてみます。もちろん、企業がこれまで積み上げてきたレガシーである仕組みを、なかなか変えられないということも理由にあります。しかし最大の原因は、「さまざまなDXプロジェクトをゴチャ混ぜにしている」ことにあるのです。
DXプロジェクトといってもさまざまな種類のものがありますが、プロジェクトの性質によってリスクの大きさが違い、それを意識せずに実行することが多いため、必然的に失敗してしまうのです。
(©筑波大学大学院ビジネスサイエンス系 立本博文)
「攻めのDX」と「守りのDX」とは?
攻めのDXと守りのDXの違い
DXには大きくわけて、「攻めのDX」と「守りのDX」があります。攻めのDXは「価値の創造」。守りのDXは「業務の改善」。言い換えると攻めのDXは「新たな事業機会をつくり、売上に貢献する取り組み」、守りのDXは「業務プロセスを改善し、生産性向上に貢献する取り組み」です。簡単に説明すると下図「攻めのDXと守りのDXの違い」のような特徴があります。
攻めのDXは部門の壁を超えないとできず、会社の利益の中から投資する必要があります。不確実な要素が大きくてROIの見込みが立ちません。これに対して、守りのDXは部門の壁を超えなくても可能で、かつ部門内の予算で処理ができ、ROIの見込みが立つもの、となります。
(©筑波大学大学院ビジネスサイエンス系 立本博文)
DXの3つのステージとは?
DXのステージは3つある
実際にDXプロジェクトを推進する観点から、攻めのDX・守りのDXは「業務のDX」「事業のDX」「価値のDX」の3つに分類できます。各DXと部門との対応関係に注意してください。DXプロジェクトでは「部門で生まれるデータをどうするのか?」「どのように部門間でデータをつなぐのか?」が重要なポイントになります。
「業務のDX」「事業のDX」「価値のDX」
それに対して事業のDXは、部門間でデータを連携し相互に活用することで、売上に貢献する取り組みを指します。売上に直結するということは、必然的にバリューチェーン全体に関わってくることになりますよね。業務のDXでは、部門間でデータを流通させることでお客様に新たな価値を届け、売上に結びつける必要があるわけです。そうなると、部門の壁を超える必要が出る。それぞれの部門長が話し合い、どちらがリーダーシップをとるのか、どちらの予算でやるのか、といったことを決めなくてはなりません。このように事業のDXは組織間の調整が入るので、おのずと難易度も上がるようになります。
価値のDXは事業のDXと似ていますが、大きな違いは顧客データの活用にあります。顧客データとは購買データやGISによる移動データを指しています。こうしたデータを社内のデータと合わせて活用することで、「新しいお客様が見つかる」「今までわからなかったお客様の新たなニーズがわかる」といった価値が生まれるわけです。まさに、価値のDXが成功した状態といえるでしょう。
このようにデータ活用の段階が進むにつれてデータの範囲が広くなり、難易度が高くなります。ですから、DXに慣れていない企業では業務のDXから始めて基礎体力をつけ、少しずつデータの範囲を広げていくのがコツなのです。(copyright@筑波大学大学院ビジネスサイエンス系 立本博文)
企業のDXを推進する人材戦略とは
日本企業のDXは道半ば
シンポジウムではイノベーション会議座長の大田弘子・日本生産性本部副会長(政策研究大学院大学 特別教授)が、イノベーション会議の提言のベースとなったアンケート調査をもとに、
・日本企業のDXは道半ばである
・DXのための組織改革や人事制度改革に踏み込んでいない企業が多い
・DX人材育成のための社員研修を実施していない企業が4割を占める
・DXの取り組みは企業規模間格差が大きい
などと指摘しました。
DX推進の課題はDXに必要な組織変革や人事制度改革
紀伊國屋書店におけるDXに向けた取り組み事例
書籍流通のDXに取り組む紀伊國屋書店
ポスト・コロナを展望した書店経営のあり方では、「電子か紙か」ではなく、「電子も紙も」という意識を持って、コンテンツの充実を促す取り組みの重要性を指摘した紀伊國屋書店では、下記のような点について取り組んでいます。
「在庫取置サービス」と「ネット通販」により売り上げ増に貢献
ネット通販の業績も飛躍的に成長した。「多数の書店の休業が発生した際は受注が相次ぎ、大変な混乱が起きたが、休業で勤務できない店舗所属の従業員をネットの業務に当たらせるなどして、社一丸となって対応した結果、5倍近い売り上げを確保することができた」。
データベース構築により資料のデジタル化を推進
教育のために全書籍をデジタル化
これに対し、日本はデジタルを活用した勉強方法が遅れている。文部科学省が小中学生に対し、「GIGAスクール構想」の実施を前倒しし、電子端末の配布などに取り組んでいるが、ハードウエアや通信環境を整備しても肝心のコンテンツがなければ高い効果は得られない。重要なことはコンテンツを増やしていくことであり、当社は、ネットアドバンスの総合学習支援ツール「ジャパンナレッジSchool」の販売代理店となり、中等教育におけるICT活用をバックアップしている。また、デジタル技術を使って先生がどのような授業を展開するのか、まずは、教える側の教育方法の習熟を促していくことも大切になる。
高等教育における「デジタル教科書」にも同じことが言える。結局はコンテンツが大事だ。日本では電子化されている書籍は非常に少なく、百科事典、文学作品、歴史、語学、辞書などのコンテンツの電子化に遅れてしまっている。国会図書館や地方の図書館、大学の図書館などに相当な宝物が眠っている。国が予算を投じて、一気にデジタル化を進めるような思い切った政策を打ち出して、出版社も辞書や辞典を電子化し、データベースを作るなどのデジタル化を急ぐ必要がある。
中小企業がデジタル化を進めるポイントとは
デジタル化を進める3つのポイントを解説
鍜治田良 主席経営コンサルタントが中小企業がデジタル化を進めるポイントなどについて解説している動画をこちらからご覧いただけます。ぜひご覧ください
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